印圧(スキージ圧)はどの位?

そもそも、スクリーンプリント(スクリーン孔版印刷法)は、版とインクとスキージさえ有れば良いとされています。

これをもって「どんな刷り方をしても」同じプリントが得られるという訳ではありません。

 

世の中便利になった物で、ネットで動画を検索すると、スクリーン印刷の光景を録画した動画がわんさかヒットします。印刷だけでなく、版の作り方もヒットします。

そんなに必死にスキージに力込めたら版が壊れてしまうんじゃないの?という動画もあったりします。ちなみに、人力で壊れる程度の版はスクリーン印刷の版ではないと思っていますが(笑)

結論から言いますとスキージ圧は、版と被印刷物が「ちょうど接する」状態になるのがベストです。

ですから、という訳ではありませんが、そもそも版をベタ置きしては良い印刷はできません。
版の孔によって作られた部分に充填されるインクは、実は版厚の2/3以下しか埋まっていませんし、版を持ち上げる際に孔の側面にインクが若干残りますから(使っている感光剤に依ります)、その量はもっと減ることになります。

また、版と被印刷物に隙間を空けている場合(これが正式)でも、ほんとに軽い圧で済んでしまう場合は、スクリーンメッシュのテンション(引っ張り強度)が足りていません。こういう場合、使っているインクの粘度にも依りますが「版離れ」が悪い(スキージが通過した後も、版が被印刷物に張り付いている)と思われます。こうなると、1ストロークで通過するインクの量が最適より少なくなり、必要な印刷濃度を得るためには、余計なスキージストロークを必要とします。
「だからぎゅ~っとスキージングしましょう」というのは真っ赤な嘘で、印圧をかけ過ぎると、一度落ちたインクを掻き取る事になります。

「そんな勿体ない事できません!」と言われるかも知れませんが(笑)貴方の版のスクリーンメッシュの中央にカッターの刃を軽く当ててみましょう。

「パーン!」と音を立てて、枠の両際まで破けてしまう位強く張っていますか?そう、まりも羊羹に爪楊枝を建てた時のように(笑)

そこまでしなくても印刷はできます。しかし、

  1. 印刷濃度が足りない
  2. 印刷のエッジが綺麗にならない
  3. 織りの深い生地に綺麗にインクが落とせない
  4. 生地によって固定糊が効かない

などなど、色々な不具合が発生します。

これらを理解していないと、いつか不要な商品まで購入する羽目に陥ります。1、2はインクの性と思い込み、色々なインクを買い漁るようになり、3は色々な硬さ・厚さのスキージを試すようになります。4は仮固定糊さがしの旅です。

勘ぐれば、質の良くない版を提供しておけば、のちのちインクやスキージや仮固定糊など、様々な材料を販売する機会を残しておける訳です(笑)販売している本人が分かっていないという場合も有るでしょうが(笑)知らないで済む問題なのかなとも思います。

世の中には匠と言われる方がどの業界にもいらっしゃるようで、私のそばにも

版のテンションを自由自在に操り、平面ではない曲面にも対応しつつ、時には仮固定糊を全く使わずに綺麗なプリントを平然と行っている方

がいらっしゃいます。

これって、版のテンションとスキージ圧、インクの粘度などをその場その場で使い分けていらっしゃるとしか言いようが有りません。

その方は、肝は教えては下さいません。私に教えるとこのブログに書いちゃうって事を知っているから(笑)一つ二つ教わった事も有りますが、その方に「絶対に!言・う・な・よ!」と釘を刺されているので、こればっかりは一切しゃべっていませんし、ここにも書いていません。

この前提で(笑)

先に書いたとおり、版はつついたら破ける様でなくてはなりません。が、時と場合によっては、緩く張る事も有ります。

ここ最近は、スクリーンメッシュと言えばテトロン製がほとんどです。昔から、絹→ナイロン→テトロンと進化してきましたが、絹やナイロンが全く無くなっている訳では有りません。

感光乳剤を塗ったりの手間をかけるほどの物ではない場合には、今でもグランド原紙などを切ってアイロンで貼り付けるために、熱に強い絹を使っている場合も有ると思います。

また、テトロンに比べると若干伸縮性の強いナイロンスクリーンは、曲面に対応できるため、テンションを低めに張って使用する事もあります。被印刷物の凸凹の程度によっては、平面にしか印刷できないスクリーン印刷の限界を超える事ができます。

ではなぜ最近はテトロンが多く使われているのか。
これは、他の2種に比べてテトロンが、張った後の耐久性や伸縮性(寸法精度の経時変化が少ない)などにおいて、優れているためです。

「でも、枠に一度張ってしまったら、テンションを変える事なんかできないぢゃないか!」と思いますよね?そう、私も思います(笑)

NewmanRollerFrame

弊社のホームページでは、単独での使用以外に簡易紗張り用としても紹介していますが、本来はテンションを自在に変えるために有る商品です。このNewmanRollerFrame は、本家メーカーのホームページで紹介している使用方法の動画通り張ると、一定の強さまででしか張れません。そしてその強さでは実際にはまだ足りない位なのですが。こうして書くと、時々「御社からRollerFrameを買ってはいないんですが、その張り方教えてくれませんか?」などとお問合せが来たりします(笑)

でも教えてあげられません(笑)これは意地悪とかケチ(笑)とかいう話ではなく。
「お客様のお持ちになっている製品は本当にNewmanRollerFrameですか?」とお尋ねします。「何も付いていないRollerFrameだったり、前か後ろに余計な記号などが付いていてNewmanが付いていなかったりしませんか?」という事です。

本物のNewmanRollerFrameであれば、私の機嫌が良ければお教えします(笑)でもそうでない場合は

「私の説明通り張ったら、その製品ゆがんでしまって二度と使えなくなる事が多々ありますから、お教えできません」という事です。ほら、ケチじゃないでしょ?善意です(笑)

余談ですが、これまた販売している本人が分かっていないという場合も有るでしょうが(笑)知らないで済む問題なのかなという事例。

テトロンとナイロンは全く違う繊維です。テトロンは帝人と東レが製造するポリエステル。ナイロンとは違います。繊維製品に良く「T/C」という表記が有ります。これはポリエステルとコットンの混紡ですね?なぜ「P/C」ではないのか?というとテトロンとコットンの混紡だから正確に「T/C」と表記しています。

なぜこんな事を書いたのかと言いますとね。

世の中には、海外製品を輸入してHPに掲載して販売しているお店は最近多いです。そういったお店の中に「テトロンとナイロンは同じメッシュです」とか言っていたり、海外製品のカタログか何かを翻訳ソフトにかけた文言をそのままコピペしてHPに掲載していたり(日本語として明らかにおかしい)する訳です。それでいて「これはプロや職人が使う商品です」とか書いていたりして。おかしくないですかね?(笑)私からすれば「本当に分かって売ってるの?」って(笑)
しまいには、スクリーン印刷の資材・機材を売っているよりコピーライターが向いているんじゃないの?って気さえしますが(笑)

次回は書きそびれた(久しぶりなので少し長くなりました)ので、仮固定糊について書きたいと思います。

 

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