スクリーンメッシュの品質

本日は最近身近にあったお話しです。

とあるお客様(他資材屋さんも来ています)に行くと、長年プリントされている担当者からこんな質問をされました。

「最近、M社のバインダー〇〇って成分変わってない?インクの落ちが良くなくなっているんだけど」

M社の営業に確認してみたけれど、何ら成分は変えていないとの事でした。現場で確認したバインダーのロット番号を伝えて、M社に保管されている同ロット番号のサンプルを調べてみても、何ら間違いは無いとの事だったのです。
後日、その旨をプリント担当者に伝えても頭を捻るばかりです。私がこの業界に入った時にはすでにプリントされていましたから、相当の経験者です。季節的な物(湿度や温度の影響)とは考えられないとの事で、二人でいくら考えても原因は究明できないで居たのです。

そして数ヶ月経ったある日、そのプリント担当者の上司から連絡が有り、別件で出向いたところ今度は次のような相談を受けました。

「(他社に依頼している)版を落版すると、毎回では無いが結構な頻度でスクリーンが破けてしまう。なんで?」
って「それ、張った所に聞いてよ(笑)」
なんてやりとりがあったのですが、要点を纏めると

  • バイアス23度に張って貰った#120のスクリーンメッシュが枠に沿って破ける
  • スクリーンの規格などのカタログを請求したら某N〇〇社の物を持ってきたが・・・
  • なんか最近、紗張りを依頼しても引き受けるのが面倒くさそう(笑)

という事を色々聞いて、まずは弊社で数枚張って納品した。製版で問題があるなら、我が社のスクリーンも破けるはずで、スキージ圧の変動ではそもそも破けるはずも無い。念のため、スキージブレードの状態も確認した。

そもそも、バイアス23度に張ったスクリーンが枠に沿って破けるなんて、古いスクリーンを剥がした際の枠のクリーニングが余程てきとーなのか、スクリーンメッシュ自体が余程へぼいからに違いない(笑)
実を言うと、この「他社」とは私が以前在籍していた会社(笑)某N〇〇社のスクリーンでそんな事が起きるのか?と訝しい思いで一杯だった。まぁ、最高級品とは言わないけれど、そんな簡単に破けてしまうほど柔な代物ではなかった筈。

数日経って、状況を聞きに現場に行くと、あっさり「元に戻った!」とおっしゃる。

スクリーンが破ける破けないという問題以前に、水性バインダーの抜けが以前から変だと思っていたのが嘘のように元に戻って快適だという。そうです、冒頭で言っていた、バインダーの質が変わったのでは?云々の件も、スクリーンの質が変わったからに違いないのでした。

そもそもスクリーンメッシュは、例えば#120でも様々な線径の物があります。メーカーによっては表示方法が違いますが、糸の1本の細さがSS>S>T>M等と順に太くなっていきます。
#120とは1cmの間に120本の糸が存在するという事なので、糸の太さが太くなると糸と糸の間、インクが通過する部分の面積が狭くなっていきます。この面積の部分を「オープニング」と言います。

今回の場合、他社も弊社も#120Sで張っています。メーカーに依って若干の違いは有るにせよ、オープニングに大差は無いはずです。スクリーンメッシュの織り方にも「モノフィラメント」「マルチフィラメント」など違いが有る場合が有りますが、水性バインダーの場合それほど問題になる事はありません。
版を作る為の感光乳剤の種類によって、インク孔の側壁の出来上がり方でインクの落ちづらさは発生しますが、ここではずーっと同じ感光乳剤を使用しています。

ただ、やはり解せないのが、某N〇〇社のスクリーンでそのような事件が起きたのは初めてです。先にも書きましたが、この「他社」というのは私がスタンスを創業する前まで在籍していた会社です。なので、以前はこのスクリーンを販売していました。こんなにへぼくなかったはずなのに(笑)

ただ、強く、と言っても必要とするテンションの強さで張っているだけなのに、そして落版の際にもそんなに際どい事など何一つしていないのに、数回落版していると枠の際から破けてしまうのは確か。そして、この版を使用する様になってから、水性バインダーの抜けが悪くなって、頻繁に版を拭くようになった。勿論、乾燥を遅らせる添加剤を入れていても、拭いても拭いてもインク孔にガスがかかったように抜けが悪くなっていった。
担当者が要請した際に貰ったものは某N〇〇社のカタログだけど、紗張りに使っているスクリーンメッシュは他メーカーの物ではないの?と疑いたくなる位です。

つくづく思うのが、どっちを向いて仕事をするのかがとても大事。
幸せな事に、私には上司という存在が無いので、どこぞのサラリーマン営業と違って顔色を伺うって事が無い(笑)というか、以前からそんな事露も思った事はありませんが(笑)だから、社内にも社外にも「きっと」敵は多い(笑)
でも、お客様の方を少しでも多く見て仕事をすると、こんなにも多くの経験と知識を得る事ができる。

今回の件も、お客様が困っている事に真摯に向き合っていれば、他の業者(弊社)に紗張り加工の発注を奪われる事は無かったと思います。いや、奪ったつもりはありません(笑)

お客様に「高品質なスクリーン」を使用しています(販売しています)と口では簡単に言えますが、ある程度のレベルに達したお客様には解ってしまいます。

 

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