どっちが良いんでしょう?

プリントしている内に、なかなか旨くいかないので別の種類のインクを使ってみたい

こういったご相談を時々頂きます。

ついこの前も、いままで水性バインダーを使っていたのだけれども、プラスチゾルインクを使いたいとおっしゃるので、その訳をお尋ねしました。

ポリエステル100%の生地に水性バインダーに架橋剤を添加して最終的には熱乾燥を施したのだけれど洗濯後に剥がれが生じたとの事です。でも、もっと深く伺うと、プリントした全て若しくは多くに起きた現象ではなかった。お渡しした先で1件起きたとの事です。

現物を拝見した訳ではないので断言はできませんが、これってインクに問題があった訳ではないと思います。インクや乾燥に問題があれば、プリントした全て若しくは多くの数に、同じ問題が起きるはずです。

シルクプリントで厳禁な事

  • アイロンをかける(インクの再溶融・破壊が起きる)
  • ドライクリーニング(使用する薬剤がインクを破壊する)
  • つけ置き洗いする

など。

本来、シルクプリントした繊維製品は手洗いが基本です。でも、そんな事言ったらお客様に面倒くさがられて注文もらえないとかあったりして(笑)また、最近の家庭用洗濯機も高度な機能が付いていたりして、インクを剥がしてしまう場合も有るんです。お客様に聞いたら「うちで普通に洗濯しました」って言いますけど(笑)

という訳で、水性バインダーとプラスチゾルインクのどちらが完全に優位なんて事はありません。

ただいずれかのインクの短所は他方の長所となりがちです。

例えば、

「プラスチゾルインクは絶対版を詰まらせません(水性バインダーは版がつまるでしょ?)」

というフレーズ。

言い換えると

「水性バインダーは高価な乾燥装置が必要ありません(プラスチゾルインクは高額な乾燥装置の初期投資が必要でしょ?)」

となります。

 

また、逆に

「水性バインダーには柔らかい仕上がりのプリントができます(プラスチゾルインクの仕上がりはゴムみたいでしょ?)」

というフレーズは言い換えると

「プラスチゾルインクは選択堅牢性が高いです(水性バインダーによるプリントは風合いが柔らかい分洗濯堅牢性が低いでしょ?」

上記2点の表現は、いずれも本当はそうではないんですが(笑)

 

水性バインダーは自然乾燥「も」できてしまいますが、勿論ベーキング(熱乾燥)を行った方が乾燥速度も速いし、洗濯堅牢性も上がります。ただ、中間乾燥・トンネル乾燥機などを使用すると、当然の様に室温も上がってしまいますから、版上での対策も必要になってきます。
プラスチゾルインクを使用されている方々は夏場、地獄のような暑さの中で作業しているのを良く知っています。冷房を入れたら入れたで、乾燥の温度管理を殊更厳密に行わなければトラブルの元になります。

「プロの方はやはりプラスチゾルインクを使う物なのでしょうか?」というご質問を時折頂くのはなぜかなと思いますが(笑)

私の知りうる限りでは、生業としてプリントされている方には水性バインダーをお使いの方も、プラスチゾルインクをお使いの方も、どちらもた~くさんいらっしゃいます。

一番大切なのは、最終的な製品・作品の出来上がりが、「より良く」貴方の求めている、若しくはお客様が求めているものにするためにはどうしたら良いか?という事ではないかと思います。

「世の中のプロ」はこうしてます。という台詞に従えばそういった物ができあがるのか?と言えばそうではないでしょう。

「プロが使うプラスチゾルインクは一切乾燥しないので、使い終わった版上のインクをそのまま保管し、次回のプリントの際に楽になります」みたいな台詞を見たことがありますが、プロがみんなそんなに怠け者とは思えないのですが(笑)
そもそも、そんな事した日には、次回のプリントは埃まみれです(笑)また、版はポリエステルのスクリーンメッシュに可塑剤が転移したり、顔料のゴーストが残って、再版できなくなっちゃいます(涙)

「プラスチゾルインクが硬くて、柔らかくするにはどうしたら良いですか?」と問い合わせたら「ホームセンターで売っているペイント薄め液で希釈して下さい」という答えを貰ったという話を聞きました。インクが破壊されるだけだと思いますが。

「これからはプラスチゾルインクの時代です」って、20年以上も前から有るんです、プラスチゾルインク。
「プラスチゾルインクは油性ですから、耐油性の版が最適です」って、最適は耐水性版です。版洗浄に溶剤を使う場合耐油性、専用洗剤を使い水洗する場合は耐水性の版です。
※感光乳剤も、本来は「油性インクで壊れやすいものを耐水性、水性インクで壊れやすいものを耐油性と呼びます。

さて、プラスチゾルインクの悪口ばかりを言っているような気配さえありますが(笑)基本、前述のように

「一番大切なのは、最終的な製品・作品の出来上がりが、「より良く」貴方の求めている若しくはお客様が求めているものにするためにはどうしたら良いか?」です。

プラスチゾルインクを販売したい販売店、プラスチゾルインクを使って貰えば高額な機械も買ってもらえそうだからという販売店の宣伝文句に一言有るからlこうなってしまっているだけですので。

使ってもらっているお客様が、何かで困っている時に「も」きちんと対応しなさいってば。

 

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