ポジ作成用フィルム

前々回は、版作成の感光乳剤について書きましたので、今回はポジフィルムについてです。

皆さん色々なものをご使用かと思います。
某〇〇〇〇くんではコピー用紙だったりもしますが、他に市販のOHPシートとか、トレーシングペーパーとか。

どれが良いかなどは、感光乳剤の感度、乳剤膜厚、紫外線量などの条件によって変わります。
「とにかく焼ければ良い」という場合と、より強固に作らなければならない(耐刷性)場合によっても全然違います。

その昔(今でも存在しますが)、多くの人はアンバーフィルムというオレンジがかった色のポリエステルフィルムを原画の上に重ね、アートナイフでちまちまカットしておりました。そして、出来上がったフィルムを透明のこれまたポリエステルのベースフィルムに貼ってポジとしました。現在もその商品は弊社で扱っており、多くの大学の生徒さんに愛されています。
デジタルデータをPCやMAC、はたまたスマートデバイスから印刷する事が多くなった現在、市販のインクジェットプリンターやレーザープリンターから出力する事が多くなりましたので、これに対応するにはそれ相応の材料が必要になり、このアンバーフィルムの販売量は減っています。
現在、ほとんどの方が「何を使うか」に関わらず、黒で印刷などしたものを製版用ポジフィルムとして使っているんでは無いかと思います。
なぜ、昔はオレンジがかった色のフィルムだったのでしょうか?今も昔も、感光乳剤は紫外線で硬化します。
そうです。可視光線で硬化するのでは無く「紫外線」で硬化するからです。

ご存じの方もいらっしゃるかも知れませんが、病院などにはレントゲン室が有りますが、そこには暗室が有って、その中では赤のランプの下で作業を行っています。現在ある程度の規模の病院はデジタル化されているので暗室は少なくなりましたが。
また、製版を生業とする作業所の中には、乳剤を塗布する部屋の明かりは黄色味がかっています。
これらは全て、紫外線を排除する為です。

黒は可視光線をある程度遮る事ができますが、可視光線以外、所謂紫外線や赤外線「全て」を遮る事はできません。例え、ポジを真っ黒にして可視光線を完全に遮る事はできても紫外線を完全に遮る事はできません。
なるべく透明のベース材に印刷した方が良いのは、紫外線を通す部分(硬化する)と、紫外線を通す部分(硬化しない)の差を「より多く」設けたい為です。コピー用紙よりトレーシングペーパーが、そしてこれよりもOHPシートが有利なのはこのためです。
また、露光時間が長いよりも、短く焼けた方が、エッジを綺麗に焼く事ができます。というよりも、長い時間かけなければ焼けないと、スクリーンメッシュの色や品質によってはハレーションを起こしてしまうのでエッジを綺麗に焼く事はできません。話が逸れますが、今も高メッシュのスクリーンに色つき(主に黄色)が用意されているのはこのためで、昔は赤とか黒も流通していました。
また、自作の露光機ではケミカルランプ(蛍光灯タイプ)を使われている方が多いと思いますが、ハロゲンランプやキセノン(クセノン)ランプの方が光量が多いので、より有利です。その分製品は高価です。

こうして書いていくと、話がどんどんあらぬ方向へ行ってしまいそうですが(笑)

前回乳剤のお話をしましたが、本来、版を作る材料は単独で考える(選定する)物では無く、感光乳剤・スクリーンメッシュ・ポジの材料を関連づけて選ばなければなりません。
鹿の子織りのポロシャツに印刷している分には解像性は満足できていても、アクリルに溶剤型インクで精細な印刷をしなければならないのにできない。ひとえに腕や、使っているインクだけでは無く、そもそも版が精細に作れていない事が原因の場合がほとんどです。
繊維にしか印刷しないのでこのままで良い、という方もいらっしゃるかも知れません。コストの面から言っても、現状よりコストを上げる事はできないという場合も有ろうかと思います。

ここまでの話を整理すると、グレースケールの黒よりもカラーの黒の方がマゼンタが混合して居る黒なので、細かい柄を露光するには有利です。そして、より透明に近いベースフィルムにポジを作った方が有利です。

前出の某〇〇〇〇くんではコピー用紙でできるぢゃないか!とおっしゃる向きもありますが、耐刷性が弱いので数をプリントできません。印刷回数が増えていくと、途中で版が壊れてしまいます。それがホビー機と言われるゆえんです。趣味程度では同じ柄をそんなに大量のプリントをしない、という前提のものです。

誤解の無いように書くと上手く伝わらないかも知れないのではっきり書くと(笑)、安い材料で作った版は綺麗じゃないしすぐに壊れやすいという事です。

上の画像は以前にもこのブログで紹介したものですが、スクリーンメッシュがともに#120です。わざと右の写真は倍に拡大しています。
どちらもスクリーンメッシュに対して角度を付けた直線ですが、右の版が以下に綺麗に焼けているかが解ります。
ちなみに片方は弊社推奨の感光乳剤で、もう一方は他社(某〇〇〇〇くんではありません)製品で作った版の拡大です。

「いやぁ~こんなに細かい部分の違いなんて、プリントには影響ないってば」と思いますでしょうか?
その通りです(笑)
ただ、明らかに左の乳剤は崩れているという事です。そう、壊れやすいものと思われます。ここに持ってきて、ポジも安価なものを使えば、もう言わなくても解っちゃうくらいの版しかつくれません。何百枚もというか、数十枚で壊れてしまうと思います。と言うか、これを使っている方から預かったものを私が写真に撮ったものですし、現にその方は数十枚単位で版が壊れるし、そういうものだと言われていましたという事でした。

感光乳剤は様々な種類のものがありますが、解像性(細かさ)を重視するのか耐刷性を重視するのか。はたまたどっちもか、とか、耐溶剤性を求めるのか耐水性を求めるのか。でも、これらはあくまで、その他の条件、例えばポジフィルムとか露光する光源の種類とかを検討・整備してからの話になります。
光源の紫外線量が極端に少ない状態では長時間露光が必要になりますが、感度の悪い乳剤を使用すると当然出来上がる版のエッジはぼやけがちになります。ポジフィルムについても、濃度の足りない、若しくはベースの透明度の足りないポジフィルムを使用すると同じ事が起きます。

市販のOHPフィルムはより透明度が高いものがありますが、これに作られたポジフィルムは概して紫外線に対しての濃度が足りないものとなってしまいます。シートがインクジェットプリンターのインク(顔料・染料)をはじいてしまうので、フチは濃くなりますが、ベタになればなるほど中央部よりは薄くなってしまいます。同じポジフィルムを2枚重ねて使用する等という方法もありますが、細かい図柄の場合、重ね合わせにずれが生じかねないので、より単純な図柄に限られてしまう事になります。

そこで、インクジェットプリンターの水性インクを均一に受け止める層(インク受理層といいます)を微かに塗布したものがスクリーン印刷ポジ用のStan-Filmです。

432mm幅の30M巻きと、約215mm幅の30M巻きの他にお試し用にA4サイズがあります。297mm毎に裁断すれば432mm幅のものは大凡A3サイズに、215mm幅のものはA4サイズになります。
片面にだけ受理層があるので、間違った面に印刷するとインクをはじいてしまうのでお気を付け下さい。

 

スタンスのホームページ →

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以前の記事( ameblo )はこちら →

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