増粘剤や下粘剤
プラスチゾルインクでも、水性バインダーでも様々な助剤が存在しています。
その中でも、粘度を下げる下粘剤や増粘剤のお話しです。
もともとのインクの粘度を何故変えなければならないのか?そりゃぁインクが落としずらかったり、落ちすぎたりするからでしょ?という事でしょうが、本来適切なスクリーンメッシュを選び、適切な硬さのスキージブレードを選んだ上で、適切なスキージストロークを行っていれば必要のないもののはずです。
例えば、プラスチゾルインクが硬いからと言ってレジューサーなどを添加すると、粘度は下がりますが同時に乾燥時間も増やさなければなりません。プラスチゾルインクは特に冬期に放置する時間が長くなればなるほど硬くなります。これは劣化している訳では無く、そういうものです。
こういった場合、レジューサーなどを加えて柔らかくしたくなりがちですが、本来はインクを攪拌すべきなのです。攪拌って言ったって、硬すぎてそんな事できないじゃん!と言う場合があると思いますが、本来は振動型インク攪拌機を使います。ただ、高価な機械ですから、そうそう簡単に購入できるものではありません。「振動」と付いている事から想像が付きますが、硬くなったプラスチゾルインクは、何らかの方法で「こねる」のではなく「つっついて」振動を与えてあげれば少しずつ柔らかくなります。
昔、他社からプラスチゾルインクの染み込み風を購入したら、普通のラバータイプのプラスチゾルインクを大量のレジューサーで下粘したものだったというお客様がいらっしゃいました。
水性バインダーも同じですが、染み込み風のインクはそもそも違う樹脂を使っているのであって、ラバータイプの樹脂を薄めたものではありません。
という訳で、増粘してしまったプラスチゾルインクをレジューサーで下粘する場合は、いよいよもって大変な場合にしておいて、そうした場合も乾燥時間を通常より長くして、プリント・乾燥後に洗濯堅牢性を試験するべきです。
対して、水性バインダーも長期間使わないで放置保管しておくと増粘します。劣化した場合は、溶媒の水分やターペンという少々黄色みがかった液体が分離してくるので発見できます。
水性バインダーは水性なんだから、水で薄めれば良いじゃん!というのも大きな間違いです。
例えば、アラ〇〇〇ヤマト(で無くても良いですが)を水で薄めるとどうなるでしょう?接着力が弱くなるのは想像に難くないと思います。同じように、水性バインダーに水を添加すると接着力が弱くなります。要は洗濯堅牢性が極端に落ちてしまいます。
染み込み風の水性バインダーが手元に無くて、ラバータイプに水をどばどば入れて染み込み風にするって言うのも、前述のプラスチゾルインクの場合と同じ理屈で間違っています。
水性バインダーを下粘する際には、下粘剤を添加しなければなりません。
さて、下粘ほど登場の機会が少ないと思われる増粘です。と言うのも、なぜ増粘しなければならなくなるかというと、インクの粘度が少なくなってきて、通常のプリント方法ではインクが滲みやすくなったのだと思いますが、インクがそのような状態になったのは何故でしょう?
そうです。ほぼ「劣化」
勿論、厚膜の版を使用して、かつエッジの屹立したプリントがしたい、などという場合は、インクを増粘(当然スキージの硬度も選ばなければなりませんが)します。
しかし、いつの間にか柔らかくなっていた、等という場合は、プラスチゾルインクも水性バインダーもほぼ劣化してしまった、若しくは劣化が始まりだしたと思わざるを得ない状況です。
こんな時に、応急的に増粘剤で対処療法的な事をするとどうなるか。
この場合も、当然インクの接着力に問題が生じているので、洗濯堅牢性は極端に落ちていると思わざるを得ません。ですので、原因不明で下粘してしまっているインクは、そもそも「もう」使わない方が良い。という事になります。
ただ一つ、例外的な場合が有ります。
お気づきになられている方も多いかも知れませんが、水性バインダー、特にラバータイプのバインダーに水性顔料を混合した際に、出来上がったインクが元のバインダーより下粘していたり、増粘していたりする事が有ります。
これは、水性顔料の色によって、溶媒として使われている分散剤を微妙に調整して作っている事に原因があります。
黒、赤、青、黄、、、、様々な顔料を分散剤に溶解したものが水性顔料ですが、もともとの顔料の性質に違いが有る為、水性バインダーに「均一に」混合しやすいように溶媒も微妙に調整していて、どれもこれもが全く同じ分散剤を使用している訳では有りません。これが原因となって、でき上がったインクの粘度に違いが生じてしまいます。こういった場合、インクに劣化は起きていませんから、増粘剤や下粘剤を添加してスキージストロークに変化が無いように調整すべきですね。
という訳で、下にそれぞれの下粘剤・増粘剤をご紹介しておきます。