乳剤のコーティング

感光乳剤を使って写真製版をする為には、まず版枠に感光乳剤をコーティングしなければなりません。

スクリーンのテンションも見落とされがちですが、やっぱり版を作る行程には色々重要な事柄が詰まっています。感光乳剤のコーティングもとても重要な要素です。
プリント枚数が極く少ない場合なら兎も角、ここら辺をいい加減に作ると、後々様々な問題が起きてきます。

本来、版の厚みはスクリーンの線径(糸の1本の太さ・直径)+感光乳剤の膜厚です。この厚みに絶対的な正解はありません。正しく厚い版を作る事ができれば、同じ印刷膜厚を実現するためのスキージ・ストロークの回数を減らす事ができますし、特殊なインクを使用する事も可能になります。
逆に、細い線をプリントしたい場合には、膜厚を薄くしなければ不可能な線がでてきます。スクリーン印刷では、版の膜厚より細い線はどうやっても印刷不可能です。例えば500ミクロンの厚みの版では、0.5mm以下の線は印刷不可能という事になります。詳しくは別の機会に譲りますが、スクリーンメッシュのノーマル張り(版枠に平行)よりも、バイアス張り(版枠に対して角度を付けて)の方が、細い線が印刷可能です。

ではコーティングの際、一度に厚く塗る場合と、薄く何度も塗り重ねる場合とではどちらが正解なの?と言うと、堅牢な版を作るには後者です。薄く塗っては乾燥を繰り返さなければいけません。
時折「版は何回塗れば良いのですか?」というご質問を頂きますが、これは好みです(笑)
コーティングの際に、バケット(コーター)を早く動かせば薄く塗れますし、強く押しつけながら塗ると厚く塗れます。また、早く動かしても、あまり押しつけないで塗っても厚く塗れる場合もあります。そう。版のテンションが緩い時です。薄く塗り重ねたいのに上手くいかない。これまたテンションが影響します。

本来、版のコーティングは、そもそも膜厚計という機器で測定しながら行う物です。その膜厚を把握してかつ、適正な紫外線の光量で露光しないと、本来の正式な版を作る事はできないという事なのです。
市販されているケミカルランプでは紫外線量が少ないので、厚く塗りすぎると露光不足を生じます。ですので、想定よりも長い時間露光しなければ感光する事ができないのですが、厚く塗ってしまうと、余計に時間を必要としますし、最悪の場合表面だけ露光して、スクリーンに接する側が露光しない場合も有ります。なので、余計、薄く塗らざるを得なくなります。

通常、水性ではSD-40で、油性ではAF-101で良いのですが、上手く露光できない場合、むやみに色々な(高価な)感光乳剤を試す前に、コーティングの仕方を変えてみた方が結果は良くなります。ですので、弊社ではオーソドックスな感光乳剤しかご紹介していません。勿論、他にもたくさんの種類があって取り扱っていますが。

最後にですが、コーティングの際に使用するバケット(コーター)にはステンレス製とアルミ製があります。基本は均一にコーティングできるものであれば代用は可能です。「1回切りなので定規で均(なら)します」と言われると苦笑しかできませんが「タッパーでやります」と言われた事もあります(笑)。

ステンレス製とアルミ製では、ステンレス製が高価になります。理由は、傷が付きにくいという一言に尽きます。耐腐植性はほぼ変わりませんが、コーティングする辺に傷が付いてしまうと、もう使い物にはなりません。ステンレス製は、よほど乱暴に扱わなければ一生ものとしても使えるものです。

 

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