ハーフラバー・半ラバー(プラスチゾルインクでの半ラバープリントは可能でしょうか?)

都合よくというか、タイミング良く、前回の記事をUPした直後、次のようなご質問を頂きました。今回は、このご質問にお答えする形で、詳しくお話ししたいと思います。

「プラスチゾルインクでのハーフ(半)ラバープリントは可能でしょうか?」

ハーフラバー・半ラバーとは、そういう名称・種類のインクが販売されている訳では有りません。ですので、私もこうこうすればこれで大丈夫とは言い切り(言い切れ)ません。あくまで、皆様が洗濯堅牢性や耐摩擦性を実際に検証して商品にお使い頂く他ないとお断りしておきます。
付け加えると、他の全ての材料についても同様の事が言えます。被印刷物の種類についてもそうですが、乾燥条件(状態)についても、印刷条件(メッシュや版膜厚)についても様々。「このインクで絶対大丈夫」と言い切る事はできません。インク自体の密着性になんの問題が無くても、他の部分でも問題が起きうる訳で、最終的には皆様が実際に試用してみて、検証して頂く他有りません。

私は例え話にカレーライスを引き合いに出す事が多いのですが(笑)、カレーライスを作りたいのでお芋を下さいとお客様に言われて、ジャガイモでは無くサツマイモを売ってしまう販売店は違うんじゃないかと思います。芋の中が腐っているのは論外だと思いますが、その調理の過程で美味しくなくできてしまうのは販売店の責任では無いと思います(笑)あと、もし、カレーライスにサツマイモを使用になられる方がいたらごめんなさい。

では、水性バインダーの場合と、プラスチゾルインクの場合とで順にご説明したいと思います。

メーカーによって呼び名や、分類の仕方は様々なのですが、水性バインダーは大まかにラバーバインダーレジューサーバインダー(アンカーバインダー・染み込み風バインダー)とに大別できます。大きな特徴の違いは、粘弾性(粘度)とプリント・乾燥後の風合いです。
ラバーバインダーは生地上に膜の様に乗っている感じに、レジューサーバインダーは染みこんでいる感じ(染色ではないので、あくまで「感じ」)になります。

そして、この中間がハーフラバー(半ラバー)プリントと呼ばれます。濃色生地にプリントする場合、ラバープリントでは発色(色の再現性)は良いけれども、手触り感が好ましくないと感じられる。一方、レジューサーバインダーでは手触り感は良いのだけれども、色の再現が上手くないと感じられる。こんな場合に、両方の中間を取ろうという手段です。
じゃぁ、そう言ったプリントをする場合、インクはどのようにしたら良いのか?

単純に言うと、ラバーバインダーとレジューサーバインダーを混合して使うという事です。こう書かないと、ラバーバインダーを水で薄める人がいるかも知れないので(笑)書きましたが、どのような割合で混ぜれば良いかは書けません。なぜなら乾燥時間など、一切保証ができないからです。ただし、以下に注意点だけ挙げます。

  1. ラバーバインダーにその他の水系の助剤を混合して粘度を下げない
  2. ラバーバインダーとレジューサーバインダーの樹脂はせめて同一(アクリル同士、またはウレタン同士)の物にする
  3. 同一のメーカー製の物にする
  4. ラバーバインダーを一定の割合以上にする

これらに注意した上で、洗濯堅牢性や耐摩擦性を御確認の上商品化した方が宜しいと思います。
繰り返しますが、上の4点について、具体的な数値では聞かないで下さいね。弊社製品ならまだしも、他社製品については全くお答えする勇気はございません。

次に、プラスチゾルインクについてですが、プラスチゾルインクにもラバー系とアンカー系のものが存在します。但し、プラスチゾルインクは専ら輸入品(アメリカ・カナダ)になりますから、日本国内では「ほぼ」ラバー系の物しか流通していません。ちなみに中国製や韓国製は私は信用していません。これは個人的な感情もありますが(笑)、様々なお客様からの情報を総合すると、プラスチゾルインクとしての挙動がとても怪しいからです。
そして、プラスチゾルインクにアンカー系の物が有っても、樹脂自体は違う物なので、他のラバー系プラスチゾルインクと混合して使用することは不可です。では、どうするかと言えば、何らかを添加して工夫するしか有りません。

が、過去に数回、とても驚いた事が有りました。プラスチゾルインクにレジューサーを大量に添加して「水性の染み込み風と同じタイプのプラスチゾルインク」として販売していたお店が有りました。
確かに、ラバー系のプラスチゾルインクにレジューサーを混合すると、どんどんインクが柔らかくなってきます。と言うか、そもそもPVC=プラスチックですが、この硬度を可変させる為の「可塑剤」=レジューサーです。添加量を増やせば柔らかくなるのは当たり前なのですが、当然硬化=乾燥は遅くなります。増やせば増やすほど遅くなります。そして、生地への接着力は落ちます。プラスチゾルインクへの添加量を増やせば、染み込み風のバインダーのように粘弾性が落ちます。しかし、メーカーが警告するレジューサーの添加量の上限を超えています。印刷乾燥後の状況は推して知るべしです。
もっと酷い話では「インクが硬いので薄めたいんですが?」と質問をしたら「ホームセンターでペイント薄め液を買ってきて、それで薄めてください」と言われたそうです(笑)実際、使用後の版を洗う時など、プラスチゾルインクを清掃したい場合には、(本来専用の液体が有るのですが、)灯油で溶かしてしまえば可能です(臭いが酷いですが)。ペイント薄め液をプラスチゾルインクに添加するって事は、PVC、用は主成分のプラスチックを溶かす。。。壊すって事です。壊れたインクで印刷しろと。。。。

先述の水性ラバーバインダーを水で薄めてはいけない、という説明もこれと同じ事で、水性バインダーの樹脂を水で希釈するという事は。。。木工用ボンドに水を加えるとどうなるでしょう?水性接着性樹脂の性能を落とす・壊すことです。

プラスチゾルインクでハーフラバーのようにしたい。ということが、プリント仕上がりをもっと柔らかくしたい、という事であれば「専用の柔軟剤」を添加してください。弊社製品ではLsink Adhisiveがこれです。

 

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