インクの仕組みと色作り

繊維製品にプリントするインクの代表例は「水性バインダー」と「プラスチゾルインク」ですが、大きな違いは何でしょうか?

「プラスチゾルインクは隠蔽性が有るが、水性バインダーは隠蔽性が無い」×
書き出せばキリが無いくらいもっともっと多くの誤解が有りますが、今回はこの誤解を説く為に、まず表題の通り「インクの仕組み」について書きます。

プラスチゾルインクも水性バインダーも「樹脂+顔料」でできています。
プラスチゾルインクは「PVC(ポリ塩化ビニル)+可塑剤+顔料」、水性バインダーは「水性エマルジョン(水性溶媒+樹脂)+顔料」です。顔料は同じですから、違いは「PVC」と「水性エマルジョン」。
前回の記事でも少し触れましたが、プラスチゾルインクでも水性バインダーでも、この顔料以外の部分(以下「樹脂」と書きます)の粘弾性の違う物が有ります。粘弾性の違いは「プラスチゾルインク」では可塑剤の量で、水性バインダーの場合は含まれる固形物の量です。これらの物には若干の白濁が有りますので、隠蔽性にはほんの若干影響を与えますが、そう大差はありません。

「プラスチゾルインクは隠蔽性が有るが、水性バインダーは隠蔽性が無い」という誤解は、この「樹脂」タイプの違うプラスチゾルインクと水性バインダーを比較してしまった物です。また、同じラバータイプの物同士を比べると、多少粘弾性(粘度)に違いは有りますが、これまた隠蔽性の差では大差はありません。というか、そもそもラバータイプと大きくくくってしまっていますが、ラバータイプでも樹脂は様々ですし、レジューサータイプでも様々有ります。

インクの隠蔽性の問題は、濃色生地にプリントする場合に起きます。
白生地(淡色生地)に赤をプリントする場合

珍しく画像入り(笑)
白生地にプリントした同じインクをそのまま使用して黒生地にプリントすると。。。

。。。。。。。赤にならない。ここで、プラスチゾルインクではこんな事は起きないから優秀!と言うのは早計。現在国内で流通しているプラスチゾルインクの大半は、最初から濃生地用に作られてる(ベースのPVCを白濁させています)物なのでこうならないですが、
「本来」濃色生地にプリントする場合は

Whiteをアンダープリントした後に赤をプリントしなければ

期待通りのプリントはできません。
でも、こういう基本的な方法を取る為には、アンダープリント用の版を1つ増やさなければなりません。そして、二つのプリントがずれてしまうと下のWhiteがはみ出してしまうので、完全に一致するようにプリントしなくてはなりません。
ではどうしたら良いのか?そこで、濃色生地に一発でプリントできるインクが作れないか?となる訳ですが

この例の赤はPantone185Cです(画面によって違いますが、そのつもりで見て下さい(笑))。
オールマイティーバインダーTRB、CRBに赤(P)、紅赤(P)の他に橙(P)、桃(P)を混合したインクを使用します。
Excalibur なら551 RED(BS)、RED(YS)、MAGENTA、White を混合します。
オールマイティーバインダーCRBには若干の白(酸化チタン)を含んでいます。

白を含んだインクを使用する事で、生地の色を隠蔽する仕組みです。
オールマイティーバインダーで同じPantone185Cを白生地にプリントするインクは、TRBの他には赤(P)と紅赤(P)だけで作る事ができます。隠蔽する為の白が含まれたCRBは必要ありません。勿論、白生地に濃色生地用のインクを使用しても問題は無いので、常時濃色生地用の配合を使用しても構いません。ただ、混合する顔料が2つ増えますから、多少面倒になりますね。
逆にExcalibur(他のプラスチゾルも同じ)には濃淡色用の配合はありません。というか、両用と言えば聞こえはいいですが、濃色生地にプリントするとほんの少し違います。

ここまででおわかり頂けた通り、水性バインダーの場合もプラスチゾルインクの場合も、仕組みは同じです。

しかし、大きな問題があります。
じゃぁ、白を含んでいない色はどうやってプリントすれば良いんですか?という事です。Pantoneカラーで言うと3桁の先頭が「0」の色の大半は作れません。そして真っ黒。前半でお書きした通り、樹脂には何らかの白濁する物質が若干含まれていましたよね?厳密に言うと、真っ黒はどうやってもシルクプリントのインクは作れません。人間の目はそこまで精巧では無いでしょうから、真っ黒「らしき」黒でプリントしましょう(笑)
そして、白を含んでしまうと作れないけど、白を含まなければ作れる色は、画像の通りWhiteをアンダープリントしなければなりません。

そもそも本来濃色生地にプリントする場合はアンダープリントするのが基本です。アンダープリントする事で、特に織り目の深い生地は下地に平滑性がでて綺麗に仕上がります。
「版を1つ増やすのは良いけれど、ずれてしまいます」という方。

版のテンションは緩くないですか?
生地はしっかり仮固定されていますか?
印圧はどうですか?

常日頃、このブログで書いている様に、重ね刷りに限った事では無く、これらがきちっとしていないと色々な問題が生じます。
スクリーンプリントは1色をTシャツにプリントする分には、さして大きな障害はありません。が、1色増える事によって格段に難しくなり、織りの深さが違う、例えばポロシャツになればまた難しくなります。淡色生地から濃色になっただけで起きる色の問題もそうなんですが、アンダープリントWhiteの版を作れば良いのに、そこを嫌って延々数時間も、作る事の不可能なインクを調合し続ける事ほど、見ていて悲しくなる光景はありません。

オールマイティーバインダー及びExcalibur 551 インクは、色の調合割合が確認できるインクとして用意させて頂いています。今回お話しした内容は、スクリーンプリントインク全てに同じ事が言えます。勿論、下地を隠蔽できるカラーを用意できる場合は、版を作ったりするコストを考慮に入れる場合も必用かと思います。しかし、下引きをする事で得られるメリットも多い事を知っていると居ないとでは仕事の巾に大きな違いができると思います。

 

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