抜染印刷(濃色生地に風合い柔らかく)

年に一度とかお問合せが有ったりしますが、

「(オーダーしてくれるお客様から)子供が着ても大丈夫なインクを使ってますか?って聞かれたんですが」

こんなこと言われたら困りますよね?私も困ります(笑)

インクは樹脂です。生地に接着させます。プリント部分をかじってはダメです。なめてもダメです。そういうことはお母さんがお子さんに教えてくださいね。って話じゃないかと(笑)
「いや。もしもかじってしまったらとかですよ」って言われても、私は医者では無いので解りません(笑)ていうか、かじって飲み込んでしまったら、食べ物じゃ無い限りどんな物もダメじゃ無いですか。
「じゃぁ、触っただけでアレルギーとかでませんか?」って聞かれても、PCR検査じゃ無くてアレルギーの検査受けてから聞いて下さいって話しで(笑)
そんなに心配ならプリントしない方が良いんじゃない?とまで思えますが(笑)

こういった話は少し大げさですが(実際に有った話しですが)、人によってあんまりべたべたプリントした感が無い方が良いというお客様は結構いらっしゃいます。
ラバー系のインクよりはアンカー系(染み込み風)の方が良いという感じで。でも、こういった場合に問題なのが、濃色生地へのプリントです。

濃色生地にシルクプリントする方法はややこしいのですが、原理は簡単です。

前もって世の中の誤解を解いておきますが「水性は隠蔽性が無いので油性(プラスチゾル)を使いましょう」というのは大きな間違いで、プラスチゾルインクを売りたいが為のトークです。なぜならば、インクの隠蔽性の問題は、次に説明する「樹脂に含まれる顔料」の問題なので、水性も油性も原理は同じく樹脂+顔料です。そして同じ色の顔料の隠蔽性は同じですから。じゃぁ、樹脂が違うのでは?というのは、水性には樹脂が強いラバー系と弱めなアンカー系が有りますし、油性にも同じ事が言えます。
多くが国内で生産している水性は様々な樹脂の水性バインダーが流通していますが、主にアメリカ産のプラスチゾルインクは全てのタイプの物を輸入できないので、ラバー系の物しか「ほぼ」流通していません。アンカー系のプラスチゾルインクも原産国には有ります。
正確に言うと、プラスチゾルインクを輸入販売しかできない業者様が、水性に勝とうとする為に、こういった宣伝文句を言うのかと思います(笑)

ちなみに、ここまで便宜上「油性」と書いていますが、プラスチゾルインクを「油性」と言ってしまうのも間違いで、正確に言うとプラスチゾルインクはインク自体は水性でも油性でも有りません。本来インクメーカーは耐水性版の使用を推奨している位です。

さて、要は、インク(正確にはインクに含まれる顔料)に隠蔽性が無い場合、下地が透けて見えてしまうので期待のインク色にはプリントができないという事。下地の色に光が吸収され(反射しない)てしまう為、顔料の反射量が減ってしまうからです。これに対して、淡色生地は、そもそも下地の色が光を反射しやすいので、そのままインク色が再現されるという事です。
そこで、濃色生地のこれらの問題を解決して期待通りのインク色を再現する為には以下の方法を取らなければなりません。これは基本、水性バインダーもプラスチゾルインクもの場合同じです。

  1. 十分な濃度のWhiteでアンダープリントする
  2. 隠蔽力のある、いわゆるラバーインクを使用する
  3. 生地(繊維)の染料を抜いてからプリントする

この3つの方法には1長1短有ります。
また、あくまで、使用するスクリーンのテンションや使用するインク自体。言ってしまえば、販売先がどんなに良い物だと言っていても、本当にそうなのか?という問題もある事に留意して下さい(笑)

1.十分な濃度のWhiteでアンダープリントする

先に書いた通り、下地が白の上に他の色をプリントすれば、必ず最終のプリント色の再現は保証されます。これは、アンダープリントの白が、ほぼ全ての光を反射する為です。
ただ、版が1版増えますから、製造コストも増えれば、印刷回数も増える事になります。また、技術的な点では、アンダープリントした上に他の色を重ねる際に、寸分のズレも無くプリントできる技術が必用になります。
アンダープリントに使用するインクはラバー系のインクになりますが、重ねるインクは樹脂が拒否反応を示さない(アンダープリントのWhiteときっちり密着する)のであれば、アンカー系(染み込み風)のインクでも構いません(一般的にはラバーにはラバーですが)。

年がら年中ご相談を頂く部分でもありますが、使用している版が粗悪な為(テンションが緩い)にどうやってもぴったり合わせられないとか、刷り板の都合で合わせるのに一苦労するとかが起こります。

2.隠蔽力のある、所謂ラバーインクを使用する

1の方法では、作業面でもコスト面でも技術面でも難しいとなると、この方法をとる事になります。しかし、特に赤や黄色系の顔料は、顔料自体の隠蔽力が劣ってしまう為、プリントのインク膜厚を厚めにできなければなりません。
通常使用している膜厚の版を使用して、プリント→指触乾燥→プリントを繰り返すか、そもそも版の膜厚を厚く作って克つスキージストローク理解して、一度に落とすインクを多くするかになります。
その代わりと言っては何ですが、1とは違い、刷り色の版だけ用意すれば良い事になります。しかし、使用するインクはラバー系のインクに限られる事になります。

これもまた、使用している版が粗悪な為(テンションが緩い)にあまりインクが落とせないとかが起きてしまいがちです。

3.生地の染料を抜いてからプリントする

そこで登場するのがこの方法です。
そもそも、生地に濃い色が存在するのが原因で有れば、染料を抜いてしまえという事です。そうしてしまえば、生地は白にはならないですが(生成り)、アンカー系のバインダーでプリントする事が可能になります。そしてここが、今日の本題なので、ここから少し長くなります(笑)

そもそもこの方法は相当昔から有るのですが、昔の材料は生地に薬剤が残る為、プリント後に洗濯をしなければなりませんでした。これって凄い手間です。しかし、これからご紹介する方法の場合は「熱反応」で行う方法で薬剤は飛んでしまいますからすから、洗濯は不要になります。

抜染には、繊維の染料を抜きながら同時に顔料を接着させる「着色抜染」と、単に染料を抜くだけの「抜染」が有ります。生地の染料を抜くだけならまだしも、それなら着色抜染の方が良いんではないかと思いますが、そこは抜染にも良いところが有ります。いや、そっちの方が良いのですが、ここから詳しく説明を。

着色抜染は弊社商品C.DISCHARGEインクに顔料を混合します。そしてここにDischargeAdhisive を約6%添加した物をプリントインクとして使用します。プリント後加熱乾燥します。
作業はただこれだけです。
インク自体は水性ですから、乾燥遅効剤EGや、洗濯堅牢性をあげようと思ったら架橋剤フィクサーFの使用も可です。

着色抜染プリントは、プリント色の数が少ない場合に有効です。と言うのは、DsichargeAdhisiveを混合したプリントインクはその日の内に使い切らなければならない(時間が経過すると、色が抜けなくなります)ので、残ったインクは廃棄しなければならないからです。多色になればその分だけ、廃棄(無駄に)するインクが増えるという事です。
また、C.DISCHARGEインクは勿論樹脂分を含んでいるので、アンカー風とは言え、手触りに少しプリント感が残ります。

そこで「抜染」の登場です。

「え?色を抜くだけしかできないんじゃ無いの?」と思いますでしょう?ええ、抜く事しかできません(笑)
しかし、次の手順でプリントしてみてください。

まず、EAB-Cでプリントします。EAB-Cはアンカー風バインダーなので、濃色生地にプリントすると全く色が再現できません。これだけだと、このブログにだまされる事になります(笑)
ここで、EAB-Dオーバープリント+DischargeAdhisive(約6%)で重ね刷りします。そしてその後加熱乾燥。
見事、期待通りになるでは有りませんか(笑)
そうです、先にプリントしたEAB-Cには何の影響も無く、下の生地の染料が抜けてしまうので色が再現される事になります。要は、何色プリントでも、可能な限り濃色生地にプリントした後、一気に完成できるという事になります。

お気づきのように、この方法の良いところは、多色プリントを行っても、DischargeAdhisiveを添加するのはEAB-D一つ切りなので、廃棄するインクが増えないという事。そして、EAB-Dは樹脂分をほとんど含まない為、プリント後の手触り感が従来から比べてほとんどと言って良いほどさらさらに仕上がる事です。C.Dischargeは顔料をくっつけなければならないので樹脂分が必用だけれど、EAB-Dは「抜くだけ」なので樹脂分が必要ないからです。
ただ、全色プリントした後に、全色分のベタ版が1つ増える事にはなってしまいます。
これって、EAB-Cでなくちゃできないんですか?って聞かれるんです(笑)きっと、皆さん、今自分がお使いのバインダーでもできないのかな?とか思ってません?(笑)
正直、私には断言できませんので、試してみて頂く他ございません(笑)
ただ、EAB-CはEAB-D+DischargeAdhisiveに対して化学的耐性が有るように作られています。なので、上から重ねても、事前のプリントはきちんと保持されるのです。

最後に、注意点。
抜染プリントは綿100%の生地にしか使えません。また、綿100%全ての染色に使える訳では無いのです。プリントする商品が「可抜染料を使用している」とされている商品でもです。染色には反応染料を使用して、様々な方法で行われている為、繊維と染料の結合度合いが様々だからです。
また、染色に昇華染料を使用しているポリエステルには不可能です。これはブリードの記事の所では毎度書いておりますが、染色の方法が全く違う為です。

 

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