新型撥水布用水性バインダー

今回は、新商品発売のご案内を兼ねて、撥水用インクについて。

まず、最初にご説明させて頂きたい事は、インクの選定において「素材」と「表面処理」は別に考えなければいけないという事です。

これは繊維製品以外についても言える事ですが、「インクが直接接触する部分に何が有るか」がインク選定の基準です。

「ポリエステルにつくインクを教えてください」と「撥水のポリエステルにつくインクを教えてください」とでは、答えがまるっきり変わってしまいます。

繊維製品に限定すると、大雑把に綿100%、T/C(綿・ポリエステル混紡)、ポリエステル100%、ナイロンがあります(その他に麻とか、絹諸々ございますが)。
これらの糸になんら表面処理が施されていなければ、これらの素材に密着するインクを選定します。そして、糸の性質や織方法によっては伸縮性に富む素材がありますので、それに追随できる性質を持ったインクをさがします。そして大切な事は、印刷乾燥後の風合いも考えねばなりません。

さて、先ほどの素材の中に「ナイロン」があります。これって日本では、ナイロンと言えば撥水加工されている物がほとんどです。しかし、間違ってはいけないのは、ナイロンというのはあくまで素材であって、表面処理加工方法ではないです。
特に米国・カナダで作られている事が多いプラスチゾルインクには「ナイロン用」のものがが存在します。勿論、僅かですが日本製品にも溶剤型インクのなかに「ナイロン用」と唱う物があります。これらのインクを使用して、撥水加工されたナイロン繊維に印刷すると剥がれます。何故なら、インクが接触している部分はナイロン糸では無く撥水成分(多くは疎水性界面活性素材)だからです。

そもそも、撥水加工は水系の物質が付着・含浸しないようにという事で行われる物ですから、そこにプリント、インクをくっつけようというのが無理と言えば無理(笑)撥水加工を行っている方たちは「そんなんなら、撥水加工する前にプリントしてよこせよ」という話なんでしょうけど。でも、市販されている物や、要は後々飾りたくなるからしょうが無い。

さて、そんな訳で、撥水加工された布・織物にきちんとくっつくインクですが、1液ではほぼ皆無。ほとんどが主剤(主インク)に硬化剤を混合して使う事になります。大雑把に挙げると

  1. プラスチゾルインク+ナイロンボンド
  2. 溶剤型インク+専用硬化剤
  3. 水性バインダー+専用硬化剤

等があります。

主インクに違いこそ選れ、これってほとんど同じ仕組みです。

1のナイロンボンドを使用する場合。悩みはナイロンボンドが劣化するという事。少量しか使用しないため、容器を開け閉めする度にボンド自体が硬化して行ってしまいます。2の専用硬化剤もほとんどが同じ現象を起こしますし、3もそう。特に3の場合なんかは、主インクに混合攪拌してプリントしている最中にもゲル化が早急に進行してしまう。版詰まりを気にしなくてはいけない水性プリントなのにどうもならない。
この原因は単純です。硬化剤・ナイロンボンドがイソシアネート系だから。イソシアネートは水と速攻で反応するからです。要は空気中の水分と反応して固まる作用を利用してインクもがっちり固めて素材にくっつけようという目論見のインク達なのです。

そもそも、繊維製品に使うプラスチゾルインクや水性バインダーは、素材を溶かしたりしません。溶剤型インクはその溶剤分によって素材を溶解しながら含浸してくっつくのでまだ密着優位性があります。しかし、プラスチゾルインクや水性バインダーは繊維と化学反応を起こす訳では無いので、基本繊維の細かい部分に入り込んで絡みつき、硬化する事で接着します。

ここで、プラスチゾルインクを「油性」と言われて使用している方が勘違いされるのですが「プラスチゾルインクは油性だから強力だよね?」

これまで何度もこのブログに書いておりますように、プラスチゾルインクは水性でも油性でもありません。水で洗えないから油性でしょ?というのは大きな間違いで、熱硬化型PVCインクです。熱によって、PVC(塩化ビニル)をゾル化している可塑剤を揮発させて硬化しているインクですから、水性バインダーとなんら変わらないのです。
常に水性バインダーをお使いの方が「(撥水)ナイロンに刷るために、そろそろ油性のプラスチゾルインクを試したいのですが」とお問合せを頂く度に、これらの説明をさせて頂いた上で、2をお勧めしていました。

しかし、この場合の問題点は、溶剤型のインクを使用する場合は「耐油性版」を使用しなければならないという点です。プラスチゾルインクを使っており、かつ耐油性版を常用している場合(本来は耐水性版を使用すべきなのですが)は問題ないものの、水性バインダーを常用している方には大きな障害です。別に耐油性版を作らなければならないんですから。

そこで新たなインクがその名も「パワーバインダー

なんか、ちゃんとくっつきそう(笑)

このパワーバインダーも硬化剤を添加して使う2液混合型の水性バインダーです。で、これまでと違うのは硬化剤がイソシアネート系ではありません。
ですので、インクのポットライフが相当伸びています。でも、まぁ5~6時間以内に使い切ってほしいのではありますが、印刷中にインクがゲル化してしまうことはありません。
何よりうれしいのは、水性バインダーですから、従来の水性顔料を添加して使えるのでホワイト・クリアが有れば色々なプリント色に対応することができます。

これまで、水性バインダーをお使いの方で撥水のプリントのお問い合わせを頂いた場合。密着性を考えるとどうしても溶剤型のインクをお勧めするしかありませんでした。撥水への印刷が稀で、専用インクを揃えるのに難色を示される方には、次善の策として「オールマイティーバインダー+Ripe3硬化剤」を紹介していましたが、こちらは硬化剤がイソシアネート系なので、前述の3に当たってしまいます。

今回のパワーバインダーは、密着性で溶剤型インクの場合と比較すると勝るとも劣らない出来栄えなので、水性印刷を専門としている方は是非ご注目ください。

 

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