熱転写の罠

ご無沙汰しております(笑)何事も無く無事営業しています。
なんやかや忙しく、このご時世に幸せなことだと思いつつ。

このブログでは、ほとんどが繊維製品へのスクリーン印刷の話題に絞っています。いや、絞っている訳でも無いんですが、創業時、主にこういった分野でのご相談が多く、自然とこうなってしまった訳なんですが。
と言うのも、スクリーン印刷ってものは「繊維製品に印刷する」だけの技術ではないので、スクリーン印刷の資材・機材全般を販売している我が社は、実はその他の材質に印刷するための材料も販売しています。ホームページショッピングサイトに掲載していないだけなのですね。

お客様とお付き合いさせて頂いている内に「〇〇(材料)にスクリーン印刷ってできませんかね?Tシャツやポロシャツだけで無く、〇〇にもできないかって相談されてるんですけど。。。」といったご相談を頂きます。

勿論できます。ただ、その素材によって密着(接着)するインクが様々です。そしてインクが違えば粘度も違う訳で、そうなると使う版のスクリーンメッシュの番手も変わってきます。
クリーン印刷の原理や基本は変わりませんから、まるで初めての方よりは数段早く可能になることと思います。

「紙に印刷したいんですが、普段使っている水性バインダーで良いですかね?」※プラスチゾルインクの場合も同様です。
と聞かれると「う~。紙ってコピー用紙ですか?コート紙ですか?」から始まります。

紙も繊維って言えば繊維なので、取りあえずであれば水性バインダーでも良いんでしょうけど、それって使い捨てのもの以外ではダメじゃ無いですか?って事で。

一言で紙と言っても紙・コート紙・合成紙など、そしてそれらの中にも色々な物があります。そして仕上がりはどのようにしたいのかでも違ってくるので、適するインクの候補は様々です。
スクリーン印刷で個展に出す作品をお作りになっている方が使う水性インク、立て看板の合成紙に印刷なさって商売なさっている方が使う溶剤型インク。

その時々によって相談に乗らせて頂くのが私たちの仕事です。

 

さて、そんな中、スクリーン印刷では無いのですが、繊維製品への熱転写の材料に関しても勿論相談を頂きます。

単色のウレタン(またはPVC)素材に感熱接着剤が塗布された物、またはなんらかのインクジェットプリンターでプリントできる素材に感熱接着剤が塗布された物。これらを何らかの方法(手切りやカッティングプロッター)でカットした物を、ヒートプレス機で熱圧着します。

こういった素材には、正常な商品であれば「転写条件」が記されています。

「〇〇度で〇〇秒、〇〇〇g/㎠」って奴です。

基準とする数値です。被圧着物の状態など様々なので、あくまでも目安です。最終的には洗濯堅牢性をご自身で確認して頂く必用があります。

ただ、この条件の中の「〇〇〇g/㎠」って部分が大問題です。転写圧力なのですが、材料によって様々ですが〇〇〇の中には大凡300~500が入っていると思います。

はて?あなたのお使いのヒートプレス機にはこの「転写圧力」の標示目盛り若しくはデジタル表示はありますか?

ありませんよね?

そりゃそうです。

ヒートプレス機の構造は、被プレス素材に転写シートを重ねて、下コテと上コテの間に挟んで加熱する様になっています。
そう!挟む素材の厚みや弾性が解らないんですから、転写圧力はその時々によって違ってしまうんです。

なので、通常のヒートプレス機には転写圧力の表示機能はありません

じゃぁ、なんで「〇〇〇g/㎠」なんて指示するの?圧力なんてその時々で測ったりできませんけど、って(笑)
やっぱり、できあがった製品をお客様の基準で、確認して下さいって事に尽きるのです。

なんで、こんな事を書いているのかっていいますと、それなりの理由がございます。

我が社では、セルフウィーディング転写という製品を紹介しています。レーザープリンターのトナーを使用した転写システムそのものも扱っていますし、このシステムを使って転写紙を作ってお届けもしています。
このシステムを納品し、お使い頂く中で、どうも旨くいかない。そりゃ、いきなり最初から簡単に一発でできる訳でも無いんですが、なんかおかしい。。。LINEを使って旨くいかない様子を送って頂くんですが、私にも腑に落ちない。。
結果解決するのですが、圧力が足りないって事が大いにありすぎるのです。

やりとりの中で「圧力は強めにしています」とかおっしゃるのですが、なんか変。
「このプレス機を買った時に、販売店の方が調整していったまま使っています」とか。

「もっと赤い、赤の顔料はないんですか?」
「濃い白のインクを探しています」
「版を早く落とせる落版剤はないですか?」

どれも基準が解りません。

「圧力は強めにしています」っておっしゃるけれど、結果、それって弱かったです。。。。

こういう傾向が多く見受けられますので、皆様、一度ご自身で洗濯してその堅牢性を御確認頂いた方が宜しかろうと思います。

世の中には「熱はしっかりかけられるけど、圧力はまるでかけられない熱プレス機」を販売している所も多いです。
プロの(様な)顔をして「この機械を買えば大丈夫!」と言われれば、そりゃぁそれを信じて使い続けます。

 

最後に、何時もの余談です(笑)

先ほどの「〇〇〇g/㎠」って圧力条件ですが、これって1平方センチに何グラムの力をかけなければならないのか、という事です。

300g/㎠であれば 1cm×1cmの転写を行うのに300gですね?
じゃぁ、10cm四方の転写を行うのには、10×10×300=30,000gの力(圧力ではないです)が必用と言うことになります。

時折見かけるのですが「家庭用のアイロンでもできます」と唱っているホームページ。

先の例で言えば、10cm四方の転写紙を家庭用のアイロンで大丈夫なんですよね?家庭用のアイロンに30kgの小学生に乗っかってもらっていなけりゃなんないんですけど(笑)それも数秒から数十秒。家庭用アイロンの耐荷重って何Kg?(笑)

そういう事を言う販売店。地元北海道にあるのは知っていましたが、全国どこにもありますから困った物です。

 

スタンスのホームページ →

ショッピング(Web-Stance)はこちら →

以前の記事( ameblo )はこちら →

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