仮固定はなぜ必要?
2020年が開けて早や1月。みなさま、今年も宜しくお願い致します。
さて、昨年度最後の記事で予告させて頂いた、仮固定です。
シルクスクリーン印刷全般でみると、被印刷物を仮固定する場合と、仮固定しないで済む場合があります。簡潔に言うと、重量物は仮固定が必要ない場合が多くなりますし、例えばクリアホルダーのようなものの場合は、仮接着の糊跡が残ってしまいかねないので、プリントボードがバキューム構造になっています。
端からですが、そういえば繊維製品のプリンター用にバキューム構造を取り入れたボードを見かけた事ありますが、あれって意味ないと思いますが(笑)
印刷後、版を持ち上げる際に、インクの粘度・粘着性によって被印刷物が同時に持ち上がってきてしまうと、仮乾燥の際に被印刷物の位置がずれてしまいます。というか、それ以前に印刷の皮膜に平滑性が無くなったり、最悪の場合は滲みます。
このブログを閲覧して頂いている方の多くは、繊維製品へのプリントをされているのだと思います。繊維製品に印刷を行う場合、インクの仮乾燥なしに何度重ねて印刷してもあまり効果が見られないため、数ストロークの後に版を上げ、なんらかの方法で印刷皮膜を指触乾燥すると思います。と言う事は、被印刷物は刷板(プリントボード)に確実に仮固定されていなければならない事になります。
本来、スクリーン印刷の原点である、オフコンタクト・スキージ圧・インク粘度の調整を極めると、仮固定なしでも綺麗なプリントは行えるのですが、あれは究極の腕前です(笑)私、そんな匠には1人しかお目にかかった事がありません。
まぁ、そんな話は一旦置いておいて(笑)
一番手軽な仮固定には「スプレー式の」糊を使う方法でしょう。
付箋とかで有名な某一流企業では「スプレーのり〇〇」という商品があります。一般的には、これを使っている方が多いのでは無いかと思います。かくいう私も、様々な場面でお世話になっております。
ただ、お手軽な反面、少しかゆいところに手が届かない場合も多々有ります。
- 粘着力に持続性が足りない
- 被接着物を選ぶ
- 周りに飛び散る(気づかない)
という事です。
1なんかは、プリントボードが常温で得有ればそれほどでも無いのですけど、熱乾燥するインクを使う場合、当然中間乾燥も熱をかけるため、あっという間に接着性が落ちてしまいます。水性バインダーを使っている方は「それほど」でも無いんですが。まぁ、逆に熱をかけると接着力が増す「スプレー式」の糊もありましたが、値段が高騰してしまったため弊社では取り扱いを中止してしまいました。
2は、繊維製品には綿100%だけでなく、T/C混紡もあればポリエステル100%、ナイロンもあります。
ちなみにポリエステルと綿の混紡をP/Cと書かずに、T/Cと書くのでしょう?この件については、なんかどこかで一度書いているような気がしてならないのですが(笑)記憶が定かでは無いのでもう一度書きます(笑)
アメリカのポリエステルは純粋に「ポリエスター」(単語の綴りは忘れた(笑))と言います。勿論日本でも原材料にはポリエステルは存在します。T/Cの「T」はテトロンの頭文字です。帝人と東レが共同で開発した、優れたポリエステル繊維材料の商標名がテトロンです。「帝東ロン」つまり、帝人と東レが共同で開発した、ナイロンに似た繊維なのでテトロンと名付けた訳ですね。そんな優秀なポリエステル素材は、シルクスクリーンのスクリーンメッシュにも使われています。
もとい。繊維製品には色々ありますが、綿100%の生地だとそれほど問題はありませんが、ポリエステルや、特にナイロンになると、スプレー式の糊を使用していると、1枚や2枚ならまだしも、プリント数が多くなれば、何度も何度も糊を引き直さなければならなくなります。そもそも粘着力が足りないからですね。
そして、意外に気づいていないかも知れませんが、スプレー式の糊は辺りを汚します。私はお客様にどんな糊を使っているのかを現場では聞きません。なぜかというと、その工房の換気扇を一目見れば解ってしまうからです(笑)
刷り板やプリントボードにスプレーしている際に、結構広範囲に糊成分は飛び散っている物でして。また、スプレーした際に空気中に漂ったまま、外気に廃棄されようとして換気扇の羽に付着した糊成分のせいで、結構な埃がくっついているのです。プリント作業後、プリンター機の周りを丁寧に掃除して帰る方でも、毎日換気扇まではお掃除しませんから(笑)
極端な事を言う方は「帰る頃には、ヅラをかぶったようになるぞ!」とか言います(笑)いや。。ヅラは言い過ぎでしょ。。
ヅラは無いにしても、スプレー式の糊は空気中を漂っているのは確かな事で、知らず知らずのうちに呼気として体内に吸い込んでいるのは間違いないと思いますよ。
という訳で、今日の結論としては、より効果的に、そして安価に仮固定をするならば、液体状の糊を塗布するべきだという事です。
でも、中には「以前使った事があるんだけど、そんなに良くなかった」とおっしゃる方がいらっしゃいます。
それって、海外製品だからです。
先ほども書いたとおり、ポリエステルではアメリカと日本では主流の製品は違いましたよね。ナイロンもそうです。
時折ありがちな話ですが「ナイロンに付くインクは有りますか?」と質問するとアメリカのインクのカタログを根拠に製品を進める方がいます。確かにカタログには「ナイロンに使用可」と書いてあるのでしょう。でも、訪ねられた方は、日本のメーカーが作ったナイロン製品にプリントしたいのだと思います。日本のナイロンとアメリカのナイロンは同じでしょうか?
アメリカのプリント職人さんは「ヘイ!ミーはこのボンド使ってばりばり印刷してるのさ!ヒュー」とか言ってるのかも知れませんが、それをそのまま日本の型が「はい。拙者は・・・・」とはなりません(笑)
でも、弊社でおすすめしている国産の製品も、なんとなく名前が似ているから勘違いされるんですよね(笑)使ってみて貰えば解ります、違いが。