「シルクスクリーン印刷」とは1
「シルクスクリーン印刷」と言うと、皆様はまず最初に何を思い浮かべるでしょう?
道具としては「〇〇くん」でしょうか?
印刷された製品(商品)としてはTシャツですか?
シルクスクリーン印刷を一言で言い表すと「孔版印刷の1種」となります。
では、何故「1種」なのでしょうか?
インクが通る道を必要な部分にだけ作り、そこからインクを通して印刷する技法を「孔版印刷」と言いますが、シルクスクリーン印刷はまさに「孔版印刷」ではなかろうかと思われます。
しかし、シルクスクリーン印刷を正確に表現すると以下のようにならなければなりません。
「孔版を通してインクを通す際に、版と被印刷物との版離れとインク返し(孔へのインクの充填)を利用して、できうる限り多く通過させる。そして、インクが通過する際には、インクを内部回転させ印刷ムラを最小限に抑える手法」
なんと長々とした説明でしょうか(笑)でも、これが正解。
時々「インクを塗る」という表現をされる方がいらっしゃいますが、シルクスクリーン印刷は「インクを落とす」もしくは「通す」という表現が正解でなくてはなりません。
シルクスクリーン印刷に携わっている方が初期の段階で躓く原因は、概ねこのシルクスクリーン印刷の原理原則の部分が大きく関わっています。
特に、繊維製品など、被印刷物の表面の平滑性があまり無い材料への印刷は、その材質の非平滑性に加え、使用するインクの粘度・性状によって、印刷ムラや印刷エッジの滲みなどの問題は起きずらく見えます。
しかし、非繊維製品(木・金属・PVC等など)に刷るインクは粘度が低く、加えて材質の平滑性ゆえに、印刷ムラや印刷エッジの滲みを絶えず気にかけねばなりません。
シルクスクリーン印刷の必要条件を要約すると以下のようになります。
「適度なテンションを持った刷版により、版離れを実現する」
他にも被印刷物に適した(密着する)インクを選定しなければならなかったり、インクを落とす際に使用されるスクゥイージィの硬度など、大切な要件が有りますが、シルクスクリーン印刷の一大要件を「まず」満たさない場合には、後々様々なトラブルが起きる可能性を秘めることになります。
逆に言うと、トラブルが起きた際にはこの点に戻ってみることが大切です。
「べったり版をくっつけていても綺麗にすれているよ」とか
「インク返しなんかしないよ。熱乾燥インクだから版はつまらないし」
とおっしゃるのであれば、それはそれで良いのです(笑)
ただ、シルクスクリーン印刷の原理を理解しないで、資材や機械を販売する業者は信頼に値しません(笑)
「綺麗に刷れている」かた正しい方法、なのではなく、正しい方法を理解して刷っているから綺麗になるのであり、
「版が詰まらないから」正しい方法、なのではなく、正しい方法を理解して版を使用しているから詰まらない、
のでなくては、いつかトラブルが起きた時には全く対処ができない事になります。
「なかなか濃い印刷ができない・・・」と悩んで、インクをあれこれ探した事が無いでしょうか?
正常なテンションで張った版を使い、版離れを意識してセットし、インク返しをしたプリントで印刷されるインクの膜厚は
版の膜厚(スクリーンの厚み+感光剤の厚み)の2/3程度です
それに比べて、テンションが足りない版をベタ置きで、インク返しをせずに印刷された膜厚は
版の膜厚(スクリーンの厚み+感光剤の厚み)の1/2以下になります。
たった1/6の違いですが、100枚プリントすると、どれだけのスキージストロークの違いになるでしょう?
また、ここを改善せずにどんどん新たなインクを勧められ購入すればよいのでしょうか(笑)
資材屋が言う事ではないかもしれませんが(笑)資材屋ばっかり儲けさせる事になりかねませんね(笑)