適切な乳剤のその前に
いつも、シリーズものの様に書いたり、次回予告を書いたりしていますが、しょっちゅう反故にしてます。
なんか、しばらく前に「次回は乳剤」とか書いた記憶が有るんですが(笑)
シルクスクリーンの版を一から作るには
- 枠を用意する
- 適切なテンションで適切な材質のスクリーンメッシュを張る
- 印刷したい像をポジフィルムに加工する
- スクリーンメッシュを洗浄する(埃・油分の除去)
- 感光剤などを塗布する
- 光源で露光し、不要部分を水洗・除去して乾燥する
- 必要に応じて後露光する
という過程を踏みます。
さて、使い終わった版をあなたはどうしていますか?
- 版に残ったインクをある程度取り去る(インクバケツに戻す)
- 取り切れないインクを適切なクリーナーで清掃する
- 乾燥して保管
このような過程を踏んでいらっしゃらない方に多いのが、感光剤に関するお悩みです。
- 印刷中に壊れやすい
- 相応の感光剤を使用しても細かい像がなかなか露光できない
などなど。「そこで良い乳剤を探している」という方が多いのです。
夜遅く仕事を終えて帰宅した女性も、入念に化粧を落として洗顔しますよね(笑)
深酒して、そのままベットにバタンキューを繰り返すと、お肌は荒れませんか?(笑)
朝起きたら洗顔しますよね。
要は、版は使い終わったら即綺麗にしておきましょう!って事なんです。そして、再度使い始める時にも念には念を入れて、綺麗にしてから使い始めないから、色々な事件に見舞われるという事なんですね。
水性バインダーの場合はあんまり問題は起きません。使い終わったら、版を丸ごと水道で洗えばよいだけの事です。もたもたしないで速攻で洗ってください(笑)
問題はプラスチゾルインクの場合です。多くの場合(間違った認識なのですが)プラスチゾルインクは水で洗い流す事が出来ないため掃除が面倒臭く、放置してもスクリーンメッシュを詰まらせる事がないので、洗浄せずに放置する方が多いのです。
しまいには、放置しても大丈夫だからプラスチゾルは便利ですとまで言う輩までいますが、大きな間違いです。
先にお肌の例を挙げたのはこれを説明するためですが、プラスチゾルインクと長期間接している感光膜や、スクリーンメッシュそのものは当然劣化します。
劣化した感光膜は壊れやすく、劣化したスクリーンメッシュは弾力性を失い感光前の感光剤が付着しづらくなります。所謂、化粧のノリが悪くなるって奴です(笑)
「そんな事は無いよ、いつも使い終わったら綺麗に掃除してますよ」とおっしゃるあなた。新たに感光剤を塗布する際には、直前に脱脂洗浄は行うべきです。
「油ぎった手では触っていません!」と言い切る貴方でもです(笑)
要は、感光剤を塗布するスクリーンメッシュには何も付着していない状態でなければ、壊れやすい版になりやすいという事です。
プラスチゾルインクは溶剤ではありませんから、そのインクと長い間接する感光膜は耐水性感光剤が適しています。
「でも、版を綺麗にする際に溶剤を使ったら版が壊れてしまうではないですか」とおっしゃる方は、耐溶剤(耐油性)感光剤を使うでしょう。
しかし、再度感光剤を塗る際にはより念入りに脱脂洗浄をしなければなりません。だって、インクを洗う際に、たっぷりと溶剤を塗っているのですから。
本来は、水性バインダーに限らず、プラスチゾルインクの場合も耐水性版を使用するものなのです。そして、何らかの方法で版を水道水で洗浄し、しかしながら誇りなどの付着物を取り除いた上で再度感光剤を塗布する。
こうした過程を踏まえた上で、それでも尚、感光剤に不満足な点が見当たれば、感光剤自体のグレードアップを謀れば良いという事になります。