微妙な違いは大きな違い
ここ最近、ブログでも「たか坊の解りやすいシルクスクリーンプリント」でも、版の、とりわけスクリーンメッシュのテンションの重要性をお話してきたところ、各段に関連のご相談が増えています。
そして、これらのご相談に対応させて頂いている内に不可解なご相談を受ける事が多くなり、今一度確かめてみた事があります。
「HP(ブログ)で拝見して、ローラーフレームで張った版を使っているんですが、うまくいきません」
大雑把に言うと(笑)このようなご相談です。
中にはインクの濃度が出ない、とか、中にはインクがまだまだ詰まりやすいとか。
あれやこれや頭を捻って原因を探してみても、なかなか正解までたどり着かない・・・・
そしてある時、ふと思い立って、これまでご相談を受けた方々にご連絡してみたところ。
これってNewmanRollerFrameの一部分を3か所撮影したものです。
最初にご相談を頂いた時には、まったく気づかななったのですが、それぞれの方にお尋ねした所、お持ちのローラーフレームはこの写真とは違っていたそうです。
実はわたくしもローラーフレームという名前の商品はあちこちにある事は知っていました。
弊社が販売しているローラーフレームはアメリカ・ストレッチデバイス社が製造するNewmanRollerFrameです。
「どこがどう違うの?」そして「それでどうなの?」って話ですが、
- 一番左写真、角の金具にメモリが打ってあります
- 真ん中の写真、スクリーンメッシュを挟みこんで止める部分が「ロッキングストリップ」になっており、強く張っても滑りづらくなっています
- 1辺だけ四角柱の両端は、強度維持のため特殊構造の栓が施されています
これだけの事ですが、実はこれこそが強く張るための肝なのです。
1番の「メモリ」は、最初にスクリーンメッシュをセットする際のフレーム自体の角度の目安なので、そう重要という程のものではありませんが、
2・3は特に重要です。
2に関してですが、下のNewmanRollerFrameの使用法ビデオをご覧ください。
http://stretchdevices.com/manually-stretch-mzx-18-x-20-frame-instructional
こうして初めて、スクリーンメッシュのテンションを作る事ができます。実を言うと、まだこれでも足りない位なのです。ロッキングストリップ以外の方法で(はっきりとどんな色とは申し上げませんが(笑))止めたスクリーンは、使用を繰り返していく内にロックが甘くなっていくことが判明しています。
では3はどんな意味があるの?とお思いでしょう。
実はこの部分の補強が足りなく、テンションに耐えるようにきつくナットを締めると(NewmanRollerFrameはナットではなくボルトです)次第に四角柱が鼓状に歪んでしまいます。
「そんない強く締める必要ありません」などという方は、スクリーンメッシュのテンションの大切さを知らない人です(笑)
NewmanRollerFrame は、都度スクリーンメッシュを張り、そこに何らかの方法で版膜を作って印刷するものです。様々な状況を考慮した上で、様々なテンションの版が作り出せる訳ですから、アメリカでは使用済みのスクリーンは版膜が残ったまま1回で廃棄する事もあるそうです。
直接法写真製版を行った版は、版膜である感光膜は再生液などで綺麗に除去する事が可能なこともあって、日本ではスクリーンメッシュは破れたり、ゴーストがひどくなるまでは何度も再利用する事が多いので信じられない事かもしれません。
しかし、グラフィックプリントや電子基板のプリントなど、精密さが求められるプリントはでは、やはり版の再利用はしない傾向が強いくらいです。
また、日本のテキスタイル・プリントでは、まるで酒場のボトルキープの様な(笑)「置き版」と呼ばれる「版の保存」システムが有ります。
そこでお困りのあなた、NewmanRollerFrameを利用した通常のアルミ枠への紗張りをお考えになったほうが宜しいかと思います。
ちなみに、最後になりますが、ご紹介したストレッチデバイス社の使用法ビデオよりもっともっと強く張れる方法はある事は有ります(笑)