スクリーンのテンションとオフセット
繰り返しお話ししていますがプリント時、スクリーン版は被印刷物から少し離れていなければいけません。
「ベタ置きでもいいでしょう?」
という意見が有りますが、
- インクの粘度が異常に低い
- スキージが異常に硬い(アタック角度が大きい、版に対して垂直に近い)
- 印圧が異常に足りていない
- 最悪の場合印刷のエッジがシャープではない。はっきり言うと滲んでいる。
という事に気づいていないか、その品質で満足している、という事です。
繊維製品にプリントすると、そもそも凹凸が多い表面にプリントするので、エッジのシャープさに若干鈍感になりますが、表面がフラットな被印刷物、例えばアクリルや金属板などに、通常粘度の低い溶剤型インクを使ってプリントすると。お試し頂ければ明快に分かると思いますが、滲んでしまって全く使い物になりません。
黒のボディに日本の国旗、いわゆる日の丸をプリントする場合どのようになるでしょう?
丸(赤)の抜きが有る白版を先にプリントし、もう1版の赤をプリントします。
オフセットをとってプリントした場合は白も赤も綺麗にエッジが立っていると思います。
オフセットをとらない場合、全く同じ版を使うと、滲んだ部分の白に赤が乗り、なおかつ赤丸のエッジは滲みます。赤が滲んでいる上、白に赤が乗っている分、部分的にプリントが盛り上がります。
いただけないと思いませんか?
他色が接するプリント柄の場合、常にこの状態になってしまうという事です。
プリントの品質を維持するためには以下の点すべてを、バランス良く保つ必要があります。
- スクリーン版のテンション
- オフセット値
- スキージブレードのアタック角度
- スクリーンインクの粘弾性
スクリーンインクの粘弾性を正確に説明すると、400字詰め原稿用紙に数十枚になりかねないのでやめます(笑)
スキージブレードのアタック角度は通常70度と言われています。インクの粘弾製が高い場合には、50度まで寝かせるか、スキージそのものを研磨するかベベルの付いたスキージを使わなければならなくなりますが、そのような場合は極く稀です。
では適正なオフセット値は?
スクリーン版の枠内寸の短辺を測って下さい。そして、1/300をかけた数字が目標のオフセット値です。
例えば枠の内寸が400mmだったとすると、400×1/300=1.33…..
おおよそ1.3~1.4mmですね。
そして、おおよそこの値にしてプリントしても滲んでしまうなど印刷に納得がいかない。という事は、版のテンションが足りていないという事になります。
応急的に、もっとオフセットを多くすると改善はします。が、あくまで応急的です。
版にダメージを与える可能性も少なくありません。
「濃いインクはありますか?」というご質問をたびたび頂くのですが、今回お話しした部分を改善すると、あっという間にインク探しの旅が終わる場合もあります(笑)
- ベタ置きよりも、オフセットをとって
- インク返しをして
- 版のテンションを適正にする
これだけでスキージストロークの回数を減らす・・・・
というか、そんなに何回もストロークしなくても適正な濃度は出るはずです。