印刷の艶がでてしまうその原因

まず「艶」とはについてお話しすると、光沢の有る無しです。
凄く当たり前のことを書いていますが結構大切な話なので基本的な所から書いています。

では、光沢の有る無しは何かと言うと「平滑性」の有る無しです。

平らなところで云々という場合に、下敷きとしてガラスや鏡を選ぶと良いとされるのは、それだけ平滑性が確保されているという事ですが、ご覧になって頂ければ分かるように、ガラスや鏡に光をあてるととても光ります。

印刷されたインクも同じ事が言えますので、平滑性が高いと艶が出ます。

スクリーンプリントはスクリーンメッシュという網目をインクが通過してきますが、良くよく見ると印刷結果には凸凹があります。低粘度の溶剤型インクで、且つ高メッシュを使用する場合は肉眼ではあまり判りませんが、それでも状況によってはレベリング剤というインク面の平滑性を増す添加剤を使用する場合も有ります。

という訳で、一般的に正しい材料を使って正しい印刷を行っていれば、ツヤツヤになる事はあまり有りません。ただし、特にラバータイプのインクには仕上がりが半艶仕上がりになるものも有りますから、これは例外です。でも、あくまで「半」艶です。

さて繊維製品へのスクリーンプリントの熱乾燥は大まかに次の方法があります。

  1. 密閉式乾燥窯への投入
  2. コンベア(トンネル)型乾燥機
  3. 熱プレス機による圧迫乾燥
  4. その他

いずれの方法を採ったとしても、それぞれのインクの乾燥条件を満たすのは必須です。今回は「艶」に関して問題が起きる可能性についてお話ししていますので、先述の通り印刷面の平滑性が出すぎる場合として「3」の場合に多く該当します。

熱プレスする際にインク面と熱プレス機の間にテフロン若しくはシリコンの素材を挟むと思いますが、この場合の素材の平滑性がそのまま影響します。
安価なシリコンペーパー、特に格安ショップなどで販売されているクッキングシートはまさにツヤツヤですから、この平滑性のせいで艶が出すぎる場合があります。この場合は、多少コストはかかっても専用のテフロンシートをお使いになることをお勧めします。

次の原因としては、適正な乾燥温度を遥かに超えた場合です。
繊維用のインクはなんらかの樹脂ですから、温度が高くなるに従って、ゲル→個体(乾燥インク)→溶解→燃焼の順に変化します。適正な乾燥温度で凝固するのが通常ですが、あまりに高い温度をかけると再度溶けます。「溶解」です。この状態まで行ってしまってから再度温度が下がると、当然凝固点まで温度が下がりますからインクは固まる訳ですが、表面は正常にはなりません。はい、艶が出ます。艶無しのインクであったはずなのに艶が出ます。

今回この問題について、書こうと思った理由は、極く短期間に、同じ機器を使い同じインクを乾燥している多数のお客様から、全く同じご相談を受けたからです。ご相談の途中まで聞いたら落ちが解ってしまうくらいに。

段々想像が付いてきたかと思いますが(笑)多分潜在的に他にも悩んでおられる方もいらっしゃると思うので、今回は具体的に書きます。

ColorMaxインクを使用し、Vastex D-100(コンベア乾燥機)をお使いになられている場合。納入業者に、機器のつまみ(温度設定、ベルトスピード調整)はいじらないで下さいと言われている方が多いと思いますが、一度乾燥中のインク面の温度を放射温度計で計測してください。そして、納入業者にColorMaxインクの乾燥条件を聞きただしてください。

今回はお客様が納入業者に艶の解決方法を問い合わせても全く拉致があかないという事でしたので、私が米Vastex社に直接問い合わせました。勿論機械はなんら問題は有りません。調整つまみも勿論(笑)インクの乾燥条件や室内の風向に応じて調整するためにあるとの事でした。極く当たり前のお答えです(笑)

今回、お客様にお願いしてExcaliburインクを使って、乾燥面のインク温度を160~170度にして頂き、コンベア乾燥機のベルトスピードを最低にしてもらいました。結果は、艶も出なく洗濯試験も良好でした。
ちなみにさきの納入業者が設定した場合は、インク面の温度は190度以上にもなっており、乾燥後は必ず艶ありになってしまっていたそうです。そして、乾燥温度を170度に落としてしまった場合は、洗濯すると剥がれ落ちることが起きたそうです。

もう、笑い話としか思えないのが

お客様が「設定してくれたまま使っているとインクがツヤツヤになってしまうんですけど・・・」と相談すると

「それは設定温度が高いからです!」ときっぱりお答えされたらしいですが、お客様は心の中で「おまえが動かすなっていったんだろぉ!」と叫んだらしいです。

インクは、適正な乾燥温度を守れば、なにもそんなに高温にしなくても良いのです。高くすれば良いってもんではなくて、あくまで適正な温度を守るべきです。

 

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