ノーマルとバイアス
スクリーンメッシュのテンションにばかり話題がいきがちですが、枠に対して平行に張るか斜めに張るかについてもお話ししますね。
平行に張る場合を「ノーマル」斜めに張る場合を「バイアス」と呼びますが、どのような違いがあるのでしょうか?
大きな違いはスキージブレードの進行方向とスクリーンメッシュが垂直か斜行かの違いです。これによって
- インクの透過する量の違い
- スクリーンメッシュの番手とスキージブレードの硬度によってはメッシュに寄れが生じ易いか否か
- 作る版のデザインによってはジャギーが出易いか否か
という違いが有ります。
特殊な場合として(4色・特色)分解印刷を行う際、各版の張り角度を違えます。網点で印刷する版の組み合わせで起きる可能性のあるモアレを防ぐためです。
では前記の3点を順に説明します。
ノーマルとバイアスではバイアスの方がインクの透過量は多くなります。理論上、版の膜厚やスキージブレードの硬度が同じであれば、孔に充填されるインク量は同等ですが、版離れの際のインクの残留量の違いが起きるためです。粘度が高くなりがちなインクを使用する場合にはバイアス版を用意するに越したことは有りません。テキスタイルなどの印刷インクに比べて粘度が低い溶剤型インクでは、同じ番手のスクリーンメッシュを使用しても印刷結果の色味が変わるのは、ノーマルかバイアスかにも原因があるという事です。
次に2番目ですが、これは主に低メッシュを使用する場合に関してですが、メッシュの番手が低くなればなるほど、そしてメッシュの線径が小さくなればなるほど、スキージブレードがメッシュを引っ掻く確率が上がるからです。
テンションが高ければこれを防ぐ確率は若干あがりますが根本的な解決にはなりません。逆にテンションが緩ければ尚更寄り易く、柔らかいスキージを使って誤魔化そうとしても、今度はスキージブレードが寝てしまいインクが落ちすぎて滲みの原因になります。
さぁ、3番目はとりあえず書いてみましたが(笑)本当はノーマルかバイアスかによってジャギーが出やすいか否かという事はありません。
相変わらず下手な作画で申し訳ありません(笑)
外周がアルミ枠、その中央に黒四角のような印刷版を作ったとします。なんとなく逆のような気がしますが、黒い部分が感光乳剤で覆われた部分で白はスクリーンがむき出しとなっています(説明の都合上逆にしてあります。)。
赤丸の部分を拡大しますと
ん~今度は画像が小さくて解りづらいかもしれません(笑)おまけに黒くするのを忘れました。。
よーく見てもらうと、四角の(感光乳剤部分の)上部に段差があります。ノーマル張りのスクリーンメッシュに、画像の上端が偶然重なるとこういった事態が起きかねないという訳です。それは確かにそうなのですが、ではバイアス張りにしてみたらどうなるでしょうか?
(笑)
もっとぐちゃぐちゃ。
あ。今度は黒くしました(笑)
そうです。2番目の画像で起きていた段差の根本的な原因はスクリーンメッシュの張り方に起因している訳ではなく、感光乳剤の質の問題です。勿論、これは超拡大画像ですから、印刷結果がここまではっきり見える訳ではありませんが、エッジはかなり綺麗じゃないのは確かです。
確かに、枠に平行な画像が多い印刷ではバイアス張りの効果はあります。ただ、その場合は感光乳剤もしっかりしたものを使用しなければ意味が無い事がお解りいただけると思います。
前回の記事中で、お困りのお客様から現在使用されている版(コーティング版を納めてもらってご自身で露光している)を送ってもらっていると書きましたが、上の例はまさにその版です。
金インク中の金粉がうまく落ちないという事で送って頂いた訳ですが、他の一般色もエッジがぎざぎざになるとおっしゃっていたので、到着後ルーペで見てみるとこんなんでした(笑)このような版では、いくら印刷技術をがんばっても綺麗になるはずがありません。
今、オリンパスのデジカメを鋭意準備中です。顕微鏡モードがあるので超接写して現物をUPしますのでしばしお待ち下さい。私の創作と思われても何ですし(笑)その方が解りやすいでしょうから。