プラスチゾルインクと添加剤 -伸縮性を加える-
綿100%の繊維製品は引っ張ってもほとんど伸びませんが、特にポリエステル100%にもなると、製品によっては結構伸びたりします。
プリントされたインクがひび割れる場合の多くは次の2種類。
1.乾燥が不十分
2.生地の伸縮性に、インクの伸縮性が追い付いていない
不十分な機材の環境で印刷&乾燥を行っている場合、乾燥が十分であるかないかを「ひっぱてみてインクが割れるか否か」で判断した時、これが伸縮性のある繊維にプリントしてひび割れる場合は、原因が上記の1なのか2なのかが判然としません。
本来、インクそれぞれに適正な乾燥温度と乾燥時間がありますから、そこをきちんと説明せずに「引っ張って割れるなら乾燥不足です」などと言う業者は信じない方が無難です(笑)
少し横道に逸れます(いつもの事です)が、プラスチゾルインクの乾燥は、温度+乾燥時間ですが、温度に関しては「インク自体の温度」であって、乾燥機表示の温度「だけ」を信用しているといつか痛い目にあいます。
印刷面を「一度に均一に」「既定の温度で」「決められた時間」乾燥できる事が必須条件です。
ですから、これらの条件を満たす事ができるのであれば機材はなんでも良いのですが、加えて放射温度計を必ず用意してください。
トンネル型の乾燥機でも熱プレス機でも、機材の表示温度は、機械に仕込まれているサーモスタットの位置の温度ですから、決してインク表面の温度とはピッタリ一致しません。
また、トンネル型の乾燥機はインク面と熱源が非接触ですので、トンネルを通過する空気の状態でインク表面温度は変わってしまいますし、作業空間の湿度でも温度は若干上下します(湿度が高い時は温度は下がります)。
お問い合わせが多いトラブルは
「どうも乾燥後のインクの艶がありすぎて嫌なんです」から始まります(笑)
一通り状況をお聞きすると、トンネル乾燥機を購入し、納入業者に設定は変えないで下さいと言われるそうなのですが。
温度がデジタル表示される機種ではなく、炉の長さが50cmしかないトンネル型乾燥機で1度乾燥すれば良いと言われている方が多いのです。このような方は放射温度計でインク表面温度を計測してみて下さい。
多くは結構高温に設定されており(直近の経験では200度にもなっていました)、これがインクの乾燥温度160~170度を遥かに超えており、艶の原因になっています。
しかし、これを160~170度になるように再設定すると、インクは完全硬化しません。炉の入り口と出口では温度が下がってしまうため、結局乾燥時間が足りなくなってしまうからです。
乾燥を2度(トンネルを2度通す)事で解決しますが、ご相談を頂いた方は、購入当初そういったことは一切聞いていないと憤慨なされていました。そりゃそうでしょう。
繰り返しになりますが、
印刷面を「一度に均一に」「既定の温度で」「決められた時間」乾燥したあと、引っ張ってみて割れるようだと、インク自体の伸びを考慮しないとダメな生地だという事です。
さて、ここからが今日の本題です(笑)というか、本題の方が短いです(笑)
各プラスチゾルインクメーカーは、伸縮性のあるインク自体も用意しています。ただ、使う側からすると、綿用(伸縮性無)・ポリエステル用(伸縮性有)などと色々な種類のインクを、それも色々なカラーで揃えるのは在庫の負担になりますから、綿用のインクに伸縮性を持たせる添加剤があればこれに越した事はありません。売る側からすると、売上額は落ちますが(笑)
どんなに大量に添加しても問題は有りませんが、無限に伸びるという訳ではありません(笑)
レオタードのような、あんなに伸びる生地には追随しきれません。そんな場合は別途方法があります。
様々な繊維に適したインクは次の順序で探してください。
1.綿、綿・ポリ混紡、ポリエステル100%、ナイロンなどの繊維の素材
2.防水、非防水、撥水などの表面加工
3.素材の伸縮性
4.ポリエステルが含まれる場合、再昇華(ブリード)の有無
綿100%の場合は2以降を確認する必要はありませんが、ポリエステルの場合は1~4すべて、ナイロンの場合は1・2・4の確認が必要です。