少し頭を捻って工夫が必要
シルクスクリーンプリントの基本形は「平面」に印刷する事です。
何故ならば、縦横にピーンと引っ張って張ったスクリーンメッシュによる「版離れ」を利用したプリントだからです。
これを無視したものであれば、例えばヘルメットの全面に、ヘルメットよりわずかに大きい形の枠を作って、スクリーンを接着したものをを版として使用すれば、なんとか印刷は行う事が出来ます。
印刷結果はご覧頂いた通りになる訳ですが(笑)
さて、
通常のウエアにプリントする場合は問題ないのですが、キャップ(額の部分)にプリントしたい場合、通常のTシャツプリンターのボード上ではプリントが困難です。前述の通り。
こうした場合、以下の方法でお試し下さい。
- キャップホールドアタッチメントを使用する
- プラスチゾルインクで転写紙を作り、熱プレスする
1は、通常使用しているプリンターのボードをそっくりそのまま入れ替えるだけで良いのですが、版離れの点で気を付けないと、スキージの進行方向の奥側若しくは手元側に向けて濃淡が起きてしまいがちです。
また、キャップの品質によっては、キャップの中綿に誤差があり、1個1個で版離れの違いが起きやすい事です。
そして、多くの(数百とか)キャップにプリントしようと場合にもこの方法は向かないという事でしょう。
Tシャツプリンターの、例えば6アームすべてにアタッチメントを用意したとしても、通常のシャツをセットするのに比べると多少時間がかかってしまいます。アタッチメント代だって馬鹿になりません。
そこで2の方法の出番となります。
この方法を順に説明すると次の通りです。
- 版を通常のプリントとは別にミラー(鏡像)で作成する
- プリント面積に対して十分な大きさの離形紙を用意する
- この離形紙にプラスチゾルインクでプリントして指触乾燥する
- プリントがすべて完了したら、出来上がった転写紙を裏返してキャップに熱転写する
- 離形紙は完全に冷めてから剥がす(コールド・ピール)
以上ですのでとても簡単(笑)そうに思えます(笑)
では、細部を順に。
2の離形紙は、例えばキッチンペーパー(笑)とか、シールを剥がした残りの台紙(笑)とか、本来は「シリコンペーパー」などと呼ばれるしっかりした製品を使った方が良いのは確か(笑)
でも、原理としては先述のものでできない訳では無いのでお試しください。
3の「指触乾燥」とは最終乾燥ではなく、指で触れてくっつかない程度の乾燥を言います。詳細はインクの乾燥温度から30~40度低温で数十秒行えばその程度になります。
5のコールドピールは、熱いうちに離形紙を剥がそうとすると、インクが一緒にくっついて剥がれてしまいます。
プラスチゾルインクで一度転写紙を作るという方法は、何かと応用が効くもので、これまた箇条書きにすると
- 同じデザインのプリントが、あとから追加で注文が来そう
- ナイロン(無撥水)の生地に多色プリントしたいが、1色を熱乾燥する際に生地が縮むので多色は断っていた
など、直接印刷が難しいって場合に応用できます。
この方法の肝は3番の「指触乾燥」です。160度(メーカーによって多少違いが有ります)などの完全乾燥を行ってしまうと、これはもう転写は不可能と言ってよい状態です。
メーカーによっては、転写「しやすい」タイプのインクだけを転写可能なインクとして公表していますが、この指触乾燥→転写のラインを会得して頂く事が出来れば、メーカーが公表していないインクでも「プラスチゾルインク」であれば、単独で転写可能です。
要は、べったりくっついてしまう事のない「紙」に、一旦インクをプリントしておいて、完全に乾く前の状態でエイやっ!と生地に転写してしまってから完全乾燥しましょうよ、という仕組みです。
ただ、インクによっては向き・不向きが有ったりしますから、これを補助するために、指触乾燥後のインクの表面(最終の転写時、生地に接するインク面)に転写用の感熱接着剤を塗布する事もできます。
「自慢のデザインが出来上がったとはいえ、まだどの位注文が来るか解らない」なんて場合も、とりあえず転写紙として大目にプリントしておけば、注文がきた時にいちいち版をセットして、終わったら版を洗って、を繰り返さなくて済みます。その都度、必要になった分だけ生地を取り寄せれば良いので、最悪無駄になるのはインクの原価だけという、割とお得な方法でした。