インクの乾燥
シルクスクリーンプリントで一番起きて欲しくない問題は「剥がれ」です。
被印刷物に適したインクで適切な乾燥方法を取れば、このような問題の発生を限りなく0に近づける事が可能です。
なのに、弊社にご相談頂く内容の上位を占め要るのは、残念ながら
「剥がれてしまうんですが、どうしたら良いのでしょう?」
というご質問です。
乾燥をしっかり行いましょう。
- 枚数が多いのでチャッチャと進めたいので
- ブリードが怖くて温度を下げました
- 生地が焼けそうなので
などなど諸事情はあるとは思いますが。意地悪ではなく「まずは」しっかり乾燥を行う事わなければ、はがれる危険性が高くなるのは当然の事と言えます。
水性バインダーの場合は、何らかの添加剤を混合して乾燥条件を緩和する方法は様々有りますが、その場合も、それらの基準となる乾燥方法が有るはずですから、販売店にきちんと要請しましょうね。
プラスチゾルインクは「インクがある一定の温度に達した時」に硬化します。これが正しい説明であって「プリント面が(例えば)160度に達して30秒たったら乾燥は終わりです」などという様な説明は間違いの元です。
印刷インクには厚みが有りますから、被印刷物(生地)に接しているインクが一番最後に固まります。そこが固まったのかどうかの時間は誰にも測定できません。ただ、数百ミクロンのインクの厚みですから、そうたいして時間がかかる訳ではありませんが。
例えば、トンネル型の乾燥機にも炉長が様々な製品が有りますが、いずれにしても炉の入り口と出口は温度が下がっています。また、季節によって湿度が変われば温度は僅かにでも変わります(水分に熱が奪われて低下する)し、空調機器の入り切りで室内の、しいては炉の中の空気の流れが変わると温度は変わります。
ですので、機器の温度表示がそのままインクの温度では無いと思ってください。実際に放射温度計でインクの温度を計測し、その時間を計る事が必要となります。
「そんなに面倒くさいものなの?」とお思いになる方は尚更用心した方が良いと思います(笑)
乾燥不足が起きる様々な原因の代表的なものをリストアップすると
- 被印刷物の湿気
- インク色による遠赤外線の反射
- 機器の温度表示のずれ
- レジューサーの添加過多
等々が有ります。
販売店によっては、購入を決断し易くさせる為なのか「この乾燥機を買えばもう安心!」みたいな文言を使うところが有りますが、鵜呑みにしてはいけません(笑)
これまで「同じ乾燥機」を購入された「別の方々」から、まったく同じ相談を受けています。その方々は同様に「○○というコンベア乾燥機を購入しましたが、搬入設置の時にどこそこのノブは絶対動かさないで下さいと言われました」とおっしゃっていました。
炉長が500mm程度しかないコンベア乾燥機に「1回」通せばプラスチゾルインクの乾燥ができるという話だったそうです。
インクが剥がれるというトラブルが起きて、購入店に相談すると「当方ではそのような問題は起きていません」という回答が戻ってくるばかりで、まったく問題の解決に至らないそうです。そりゃそうです。「お宅で問題起きなくても、うちで起きてるんだって!」という話です(笑)
あるお客様は「ぢゃぁ、ここにきてやってみてくれ!」と言ったそうですが・・・
弊社では「まず、放射温度計をご用意してください。そして、実際にコンベアを通る時のプリントされたインクの温度を計って、何秒間当たっているかを見て下さい」とお話します。そして「その後、何度か洗濯して剝がれないかどうかを確認してください」と申し上げます。
先ほども書きましたが、炉の入り口出口では温度が下がっていますから、炉長500mmの内、既定の温度になってるのはそのほんの一部です。「1回」通せば絶対大丈夫なんて、私は口が裂けても言えません。
プラスチゾルインクに限らず、水性バインダーでも、または繊維製品以外に使用する溶剤型インクでも同じですが、そのインクの乾燥条件を満たした乾燥を行った上で剥離試験を行ってください。
それでも(乾燥条件を満たした乾燥を行っても)トラブルが起きた場合は、販売店若しくはメーカーに確認しましょう。それで解決できないのならば、そのインクは一切使わないようにすべきです。