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たか坊の「解りやすいシルクスクリーンプリント」
「インクの選定」


 インクの選定において、被印刷物にきちんと密着するかどうかという点が重要と述べました。
 但し、密着さえすれば良いという物ではありません。

 例を挙げると、塩ビにも様々な種類が有ります。下敷き状の硬い板の塩ビも有れば、電気コードの被膜の様な比較的柔らかい塩ビも有ります。前者を硬質塩ビ、後者を軟質塩ビなどと呼びますが、インクメーカーによってはこれらの素材に密着するインクを多品種製造しています。
 大雑把に説明すると、硬質塩ビに適するインクより、軟質塩ビに適するインクの印刷皮膜は折り曲げに柔軟に対応できるように作られています。
 極端な例ですが、金属に印刷する熱硬化型インクでコピー用紙にも印刷が可能で密着します。しかし、折り曲げには弱いのです。何故なら、金属は(印刷した後、印刷部分を)折り曲げる事を前提として作られていないからです。

 また、よく陥りやすい間違いが「木製品に印刷したが剥がれる」という現象です。折角、木に適したインクを選定し印刷したはずが、よくよく考えていると、その木はウレタン塗装された木であった、というような場合です。
 インクは、あくまでインクが接する面の材質に適したものを選びます。この場合は「木」に適したインクではなく「ウレタン塗装」に適したインクを選ばなければなりません。

 さて、前回お話したインクの種類に「水性型」と「溶剤型」が有りましたが、どちらが強いインクでしょう?

 大きく分けて、繊維の集合体(ウエアなど繊維の集合体や紙)には水性型で印刷可能ですが、それ以外の材質の多くは溶剤型のインクで印刷しない限り、良い密着結果は得られません。これをもって、溶剤型のインクの方が「強い」インクと言うのであればそうでしょう。
 しかし、別の観点から見てみましょう。
 多くの溶剤型インクの粘度は低く、#200以上の様な高メッシュの版を必要とします。また、粘度が低いという事は、繊維製品に対して含浸性が高く、インクの隠蔽性は著しく低下する事になります。これに対して、水性型のインクの多くは粘度が高く、その分含浸性が低いので良好な隠蔽性を保つことが可能です。
 結果、強いインクであればそれで良いという事ではなく、適切な密着が得られるのであれば、その他の条件も同時にクリアできるインクを選定する事がベストだという事になります。

 ここまで読まれた方の中で、繊維製品への印刷に関心を持たれている方には誤解を持たれている方が少なくないと思われるので、補足の説明をさせて頂きます。

 繊維製品用のインクにも水性・溶剤型が存在します。多くは水性バインダー・プラスチゾルインク、そして油性インクと呼ばれていますが、耐油性(耐溶剤型)の刷版を使うインクは本来「溶剤型インク」だけです。
 「だってうちは、プラスチゾルインクだから油性版だよ」とおっしゃる方がいらっしゃいましたら、正確には次の事をご理解の上でお使い頂いた方が賢明です。

 プラスチゾルインク(PVCインク)は耐水性版を使うべきであり、耐油性版をお使いの場合は刷数が限度を超えると感光膜を破壊します。

 これは、インクメーカーの正式な見解です。そして、プラスチゾルインクの洗浄には各メーカーが適した水洗用クリーナーを提供しています。確かにプラスチゾルインクを溶剤(一番安価なものは灯油)で溶解する事ができますから、溶解後にウエスなどで入念に拭きとる事も可能です。しかし、この部分を切り出して、プラスチゾルインクは油性と言うのはあまりに乱暴にすぎます。
 この説明から想像して頂ける通り、水性バインダーとプラスチゾルインクの印刷皮膜を比較して、優劣をつける事はできません。

 最後に、防撥水の繊維製品に印刷すr場合のインクの選定です。これも、先ほどの「木」と「ウレタン塗装」の項で述べた事と同じです。
 世に綿100%の繊維に撥水加工をする事はまれかもしれませんが、綿100%そのままに印刷する場合と、綿100%に撥水加工が施された部分に印刷する場合のインクの選定は全く違います。要は繊維に印刷するインクなのか、撥水加工に印刷するインクなのかという事です。

 インクの選定は一朝一夕に身に付くものではありません。様々な素材に印刷を繰り返す事が必要となります。


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