製版と落版の関係性

8月9日で投稿した「露光の問題はいずこ」では、版を作る際のポジフィルムについて書きましたが、今日は感光剤自体についてのお話です。

皆様から頂くご相談の大筋は「上手く焼けないんですが、どうしたら良いのでしょうか?」という物ですが、「上手く焼けない」っていう部分が「どのように」焼けないのかが問題です(笑)版を作るときに使用する材料で上手く焼けない原因に絡む事柄には

  • 版枠(スクリーンメッシュの番手や張り具合(テンション))
  • 感光剤の種類・性質
  • 露光機の光源
  • ポジフィルムの状態

などなど、色々あります。

これらのいずれかが条件を満たしていない場合であれば話は早いのですが、複数が複雑に絡み合っている場合は少し話は長くなります(笑)

最後に挙げた「ポジフィルム」については9日の投稿に書きました。感光剤を感光させる部分させない部分をはっきり分けなければならない、という事でしたが、それ以外(前の3つ)は感光剤自体の状態を言います。

「感光剤」という名の通り、UVが照射されると感光・硬化してしまう材料は、その膜厚や露光帯域、照射されるUV光の総量によって変化します。

1例を挙げると、緩く張ったスクリーンと強く張ったスクリーンでは一般に緩く張ったスクリーンの方が膜厚が厚くなりますから、必要とするUV光は多くなります。
同じテンションの版に感光剤をゆっくり塗布した場合とスピードを速めて塗布した場合では、ゆっくり塗布した方が膜厚は厚くなりますし、塗布するためのバケットの先端が丸まっているほど塗布される量が多くなります。

「すべて変わっていないのに、版が壊れやすくなってきた。感光剤が古いんじゃないの?」と思ったら、光源が劣化してきていて、UV光量が足りなくなっているという事も有る訳です。お部屋の蛍光灯もずーっと使っている内に段々と薄暗くなってきますよね?

さて、これらの事を理解して頂いた上で、うまく焼けない原因が見つからないとなれば、今度は感光剤の種類の問題です。

一般的に感光剤は「水性用」「油性用(若しくは溶剤型)」「両用」などと分類されていたり、また「ジアゾ系」「SBQ系」などと分類されていたりします。

「ジアゾ系」「SBQ系」の分類は、その素材による「1液」「2液」の違いであり、概してSBQ系の方が高性能で高価です。

さて、弊社でも一般的に解りやすいように前者の「水性・油性・両用」の区分で分けていますが、これはあくまで解りやすいようにという事で分けてあります。

色の白と黒、そしてその間に灰色がありますが、灰色にも色々な濃度が有りますよね。本当はもっと複雑な話なのですが、簡易的に説明すると、感光剤の水性・油性そして両用がこの図式に似ています。

一般に壊れずらいのが水性、壊れやすいのが油性です。逆に解像性が低いのが水性、解像性を高くできるのが油性です。

「水性バインダーに適した感光剤を教えてください」と言われると、躊躇なく「耐水性」をお勧めします。
理由は、繊維に刷る場合、耐油性でしか実現できない解像性を必要とする場面はほとんど無いからです。そして、耐水性版で油性インクを使用したとしてもそれほど簡単に壊れないからです。

「溶剤型インク(プラスチゾルインクではありません)に適した感光剤を教えてください」と言われると、躊躇なく「耐油性」をお勧めします。
理由はおわかりの通り高メッシュを使用する事の多い溶剤型インクの場合、解像性を求めるには耐水性では無理だからです。ただし、耐油性版上で水性インクを使用すると版は壊れてしまいます。条件にもよりますが、水性系で刷数50程度(100~150ストローク)でしょう。

さぁ、両用はどうでしょう?本来の両用乳剤は「ある程度解像性を求めながら、こわれづらい」乳剤を指します。

このように、感光剤は大まかな特性で分類して作られてはいますが、作ろうと思えばもっと細分化して作る事も可能です。
極端な話、短時間で焼ける乳剤って言うのは簡単に作る事はできます。が、しかし、そのような乳剤は刷数が少ない場合が殆ど(すぐに壊れ始める)ですので、スクリーン印刷には向かない乳剤でしょう。

さぁ本題です(笑)これが数行(笑)

「水性乳剤を使っているんですが、落版しづらくてこまっているんです」というお悩みは、これまでの説明で解って頂けるかと思うのですが。時折「印刷中は壊れづらくて、落版は簡単な感光剤ってありませんか?」っていうご相談を受けますが、まず無理です(笑)

通常30~40刷りしかしないのでというのであれば、前記の通り耐油性をお試しくださいとなりますが、それ以外の場合は良い落版剤や道具を探す事が先決です。

 

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