版の重要性

二つほど前の記事で「版の再生」について書きました。感光乳剤を露光して作った版は、何度も再生して繰り返し使えるのですが、緻密な印刷を実現する場合には、再生した版では好ましくない場合があります。
主な理由を挙げると

  • 再生した版(スクリーンメッシュ)にゴーストが残存していて、印刷濃度にばらつきが起きる事がある
  • 使用したスクリーンメッシュは印圧によって若干でも伸張しており、テンションが微かにでも緩和されてしまっている

などなど。主にスクリーンメッシュに何らかのダメージが在る場合です。

しかし、これらは「緻密な印刷をする場合」であって、毎度毎度スクリーンメッシュを新品に張り替えていては、コストばっかりが嵩んでしまいかねません(それはそれで資材屋は嬉しい事なのですが.笑)。

ただ、被印刷物がどのような媒体であれ、また、どのような解像度のプリントを行うかに関わらず、版の状態は、シルクスクリーンプリントの結果に重要な影響を及ぼします。

ある程度粘度の有るインクを使用して次の2つの方式で印刷してみてください。

  1. 被印刷物に版をベタ置きで
  2. 被印刷物と版の間に10円玉1枚分の隙間を開けて

如何でしょうか?

では、今使った版より、スクリーンメッシュを強く引っ張った版を作って2の方法で印刷してみてください。
如何でしょう?
もし、違いが出ない場合はそもそも極端に張りが緩いという事です。

同じインクを使用しているのにも関わらず印刷の濃度に違いが出ている筈です。これまで「もっと濃いインクは無いか」とほうぼう探し回っていた事が走馬灯のように(笑)

シルクスクリーンの版はスクリーンメッシュを強く張れば強く張るほど良いと言われています。スクリーンメッシュのフィラメント(糸)にも弾性の限界があるので、張りの強さにもおのずと限界がありますが。
そうすると、ここに新たな問題が起きてきます。

「やっすい、ちゃちな枠を使っていては強く張った版=正常な版は作れない」という事です。

昔は木で作られた木枠も多かったのです。この場合でき得れば「欅(けやき)」「桜」「栓(せん)」などという硬木で作れば申し分ないでしょうが、これはちょっと勿体無いでしょう。
そこで、コスト面や耐久性、取り回しのよさなどを考え合わせ、現在多く使われているのが「アルミ枠」という事になります。

ここでA3サイズをプリントできる大きさのアルミ枠に求められるいくつかのの目安をお話します。

  • 厚み1.2t~1.5tのアルミ板で作られたパイプから成っている事
  • パイプの幅が30mm、高さが20mm有ること
  • 手刷りではなく自動機などで使用する場合は「ロ」の字のような中空パイプではなく「日」を横にした、中に芯があるタイプのパイプである事

これ以外の枠に、いくら「私はパンパンに張っています」と言っても、それは「緩い」と認識した方が宜しいです。その枠に「本来求めるべきテンションで」張ったら、その枠は3次曲面に歪んでいるはずだからです(「歪んでいないよ」という場合は緩いのです)。

最後に、こんなケースもあります。

  1. 「私は業者に張って貰っているので結構強く張っていると思います」という方
  2. 「強く張っても強く張っても、強くなりません・・・・」という方
  3. 「いや、本当に強く張ってるんですが、濃くなりません」という方

(笑)

 

1.

こうおっしゃられる方数件に、実際の版を送って頂きました。結果は弊社の基準では決して強くは有りませんでした。
その業者様の印刷物を見る機会があったのですが、印刷のエッジが結構滲んでいました。

2.

こうおっしゃられる方数件に、使っているスクリーンメッシュの種類をお聞きした所、

「(購入している先に)「ナイロンとテトロンは同じものだから」と言われてナイロンを買って張っています」との事でした。
ナイロンとテトロンは全く別物です。ネットで検索するだけで違いはおわかりいただけると思うので詳述はしません。
ナイロンは非常に伸びる素材ですので、強く張っても伸びるし、印刷時も伸びています。

3.

この原因の一つは、被印刷物の固定方法に拠ります。被印刷物は一般的にスプレー状の糊で仮固定しますが、特にポリエステル繊維は接着が弱くなります。
スキージストローク後、版を持ち上げる際に版面と被印刷物がくっついた状態で、被印刷物が浮いていませんか?
もしそうだとすると、スキージストロークの最中の「版離れ」がうまく行っていない状態にもなっています。これがインクが良く落ちない原因です。

次回の予定としては「版の為のポジフィルム作成材料」です。

 

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